日本のスキー指導となぜ違う?オーストリアのスキーの上下動を考える 312
日本は海外と違い
基礎スキー技術選という
特殊なスキー文化があります。
他の国はアルペンスキーが
ベースとなっていますね。
これはとても良い部分もあり
悪い部分もあります。
これらを判別する為にも
まずは日本と海外の違いを
きちんと理解することが重要です。
今回は日本とこんなに違うのか!
と分かりやすい部分を
オーストリアメソッドから
ご紹介します。
スキーグラフィックの2019年6,7月号で
特集が組まれており、
メルマガで紹介した事から
「見ました!」
という声も多くいただきました。
一番目立ったのは
【外向傾が基本姿勢】
であり、
ベーシックなターンでは
前半からしっかり外向傾を作り
乗り込んでいく部分でした。
日本でいうと
腰外れ、ターン前半から外向強すぎ!
なんて言われてしまいそうですが
あくまでもベーシックは
それぐらいで良いという事です。
さてこの内容でも
ちょっと難しい場合に
もっともっとシンプルで
分かりやすい部分をご紹介します!
日本だとNGと言われやすい動作とは?
あなたはどんな部分だと思いますか?
日本の指導だと
一度はNG動作で言われたことが
ある部分です。
それは
上下動です!
冒頭でご紹介した
オーストリアデモ達の動画にある
ベーシックな滑りを見ると
「こんなに伸びあがるの!!?」
という位伸びあがっています。
どれぐらい伸びあがっているか
興味がある方は
スキーグラッフィクさんが
動画を乗せているので
こちらをご覧ください。
特に1:30辺りから
とても分かりやすく上下動しています。
※スキーグラフィック youtubeチャンネルより
もう脚が伸び切っていますよね!
上下動がNGだと指導するのは
日本くらいだそうです。
確かに遠征の時に
海外のコーチから
「なんで日本の子達は
みんな姿勢が低いの?」
と聞かれました。
「でも上に抜けるのって
身体が遅れてダメじゃないですか?」
と思いますよね。
たしかに身体が上に抜けると
板の力を逃がしたり、
板が前方に進んで
後傾になりやすいです。
でもオーストリアデモは
脚が伸び切るくらい
上に上がっている…
この矛盾はなぜなのか?
ここら辺が分かってくると
上下動論で悩む事がなくなってきます。
分かりづらい上下と前後
冒頭からお伝えしている様に
日本では上下動をすると
身体が上に抜けて後傾になるので
NGという指導が多いです。
この理論からすると
御紹介した動画にある
オーストラリアデモの滑りは
恐ろしいくらい上下動をしているので
当然後傾ポジションになっている!
・・・
・・・
となるはずですが
そんなことはないですよね?
きちんと板についていっています。
つまりこの事から分かるのが
後傾になる上下動と
後傾にならない上下動がある!
という事です。
日本でNGとされているのは
前者の上下動で、
海外でベースとされているのは
後者の上下動という事ですね。
この2つの上下動一体何が違うか
分かるでしょうか?
それは
前後動の有無です!
上下動にプラスして
前後動があるかないかで
滑りの結果は大きく変わってきます。
簡単に言ってしまえば
オーストラリアデモのように
上下動を大きく行っても
日本で言われる後傾ポジションにならないのは
"前"上下動をしているからです!
その視点から
もう一度動画をみていただくと
前方方向に伸びあがっていますよね?
言われてみればとても単純な話ですが
これが意外と気づけません!
その理由は2つあります!
前後動が見えない2つの理由
上下動は視覚的に
分かりやすいのに対して
なぜ前後動は
分かりづらいのでしょうか?
1つ目の理由は
スキーは足場が勝手に
前移動しているからです!
よく私はベルトコンベアの
上に運ばれている状態と
表現するのですが、
スキーヤー自身が前方向に
移動しても足場も一緒に前に進みます。
すると本人としては
前に移動している感覚でも
それを外から見ている
第3者からすれば
真上にいる状態にしか
見えません。
よくトップ選手達が
「スキーと一緒に落下する」
「落下を利用する」
「スキーについていく」
といった言葉を使いますが
滑りを見ているだけでは
あまりピンときませんよね?
それどころか
低い姿勢になるので
お尻が後ろに
下がっている様にすら見えます。
足場となる板が
その場に停止してくれれば
視覚的に分かりやすいのですが、
一緒に動いている為
分かりづらいんですよね。
ただ、前方移動が分かりづらいだけなら
まだいいのですが、
もう一つ厄介なのが
上方向に動くと
自動的に後傾になる
というところです。
当然ですが足場が前に進んでいるのに
スキーヤー自身は
その場で上に上がるイメージですと
置き去りにされて、
結果的に後傾になりますよね?
つまり板の真上に
居続けるという事は、
常に前方移動しているという事です。
でも前方移動できずに
上に動いても
視覚的にそこまで
置き去りにされている様には
見えませんよね?
これが2つ目の理由となる
ブーツが助けてくれるから
です。
これもこのワードだけですと
いまいちピンとこないかと思います。
例えば、
台車の上に立っていて、
いきなり台車を後ろから押されたら
当たり前ですけど
ひっくり返りますよね?
これは足が台車とくっついて
いないからです。
じゃあ足を台車に固定すれば
どうでしょうか?
先ほどよりは
ひっくり返るリスクは減りますが、
それでも足首が自由に動くので
怖いと思います。
そこで足首の動きを
ある程度固定する
靴を履いて固定すると
どうでしょうか?
台車をいきなり押されても
ひっくり返るリスクは
かなり減るはずです。
もう言わなくても分かると思いますが
これがスキーブーツですね!
後傾になっても
本当に後ろに転ぶことなく
ブーツが助けてくれますし
逆に前方に移動しすぎても
ブーツが制御してくれます。
つまり前後動の範囲を
ある程度ブーツが制限しているので
正しく出来ていなくても
何とかなってしまうのです。
この様に、
足場が前方に動いていて
ブーツの助けもあるので
前後動は見えずらい動きとなります。
エラーに厳しい指導方針
ここまでの話で
正しい上下動は
前方移動しながらの上下動している
NGの上下動は
前方移動がない
という事が分ったかと思います。
ではなぜ日本の指導では
「上下動だけでなく
前方移動もすればいい」
という指導ではなく
「上下動はNG」
という指導が多いのでしょうか?
それは
指導=NG動作の指摘
になってしまっているからです。
確かに上下動だけしかしていないと
先ほどお伝えした様に
板に置き去りにされてしまい
後傾ポジションになります。
そういったNG動作が出ている部分だけを
指摘するのであれば、
「上下動は後傾になるからダメ」
というのも分かります。
しかしそれは
本質的ではありませんよね?
正しく伝えるなら、
「上下動自体は悪くないけど
前方移動がないから
後傾になってしまっています」
ですよね。
さらにいえば
「最初のうちは
そういうエラーはが出ても
仕方がないので
どんどん動いていきましょう!」
という方針なのか、
「エラーが出やすいから
その動作はしてはいけません」
という方針なのかによっても
伝え方は変わります。
お気づきかと思いますが
日本では後者の指導が多いです。
もちろんエラーが出やすい動作を
なるべく行わないようにするという考えも
間違いではありません!
ただ最後に1つだけ
考えて欲し事があります。
上下動をすると
上に抜けて後傾になるリスクがある
というのは事実ですが、
じゃあ上下動しなければ
後傾にならないか?
と聞かれたらどうでしょうか?
・・・
・・・
・・・
はい上下動するしないにかかわらず
後傾の人は後傾です。
この様に根本的な部分を見直すと
そもそも上下動が正しい間違っている
といった部分では無い
別の部分を考えなければならない事が
分かってくるのではないでしょうか?