一般スキーヤーが誤解している滑りの『ズレ』と『キレ』の使い分け #395

 

ここ最近の記事では、小回りの大きさの変化や
それに伴ったズレとキレの繋がりについてお伝えしてきました。

 

スキー検定(バッジテスト)に何が起きている?小回り技術の時代の変換期、ズレとキレは別物か? #390

ここ数年にわたり、 スキー検定(バッジテスト)や、全日本技術選手権において ある大きな変化が起きている事に、気づいているでしょうか?     それが   『…

 

 

やはりここら辺を悩まれているスキーヤーの方が多い様で
以前メルマガでご紹介した際にも、色々な感想のメールが届きました。

 

 

 

その中でもいただいた質問や感想で特に多かった

 

 

 

ズレとキレが繋がらない

 

 

という部分を今回は掘り下げていこうかと思います。

 

 

 

念の為前提を整理しておくと、スキッティングと呼ばれる
板がズレてシュプール(滑った後)が三日月になるような滑りを
一般的に『ズレ』と呼んでいます。

 

 

 

その一方で、フルカービングと呼ばれる
板がズレずにシュプールが線路の様に2本線になる滑りを
一般的に『キレ』と呼んでいます。
だからレールターン(線路)なんて呼ばれる場合もありますね!

 

 

 

 

 

もちろんターン前半はズレで、後半はキレだったり、
逆にターン前半はキレだったのに、
ターン後半はズレてしまうなど色々ありますが、
今回は上記の様な形でズレとキレを認識しておいて下さい。

 

 

 

もし自分がズレて滑っているのかキレで滑っているのか
よく分からない場合は、シュプールを見ると分かりやすいですね!

 

 

慣れれば感覚で分かります!

さて前置きが長くなりましたがここからが本題です。

 

 

 

スキーにおけるズレとキレは別物なのか?

 

あなたはズレとキレが
同じ技術領域にあると感じますか?

 

 

もう少し簡単にお伝えすると

 

 

 

「ズレとキレって同じだよね!」

 

 

 

と聞いて「そう思う!」と同意できるか
それとも「いやいや全然違うでしょ!」
いまいちピンとこないかといった感じです。

 

 

 

 

これは別にどちらでも問題ありませんが、
いただいたメールの多くが

 

 

 

 

「トップ選手(指導者)の人から
 ズレとキレは同じ領域と言うけど
 正直別物に感じる」

 

 

 

といった感想です。

 

 

 

例えば

 

 

・低速種目(ズレを求められる)はきれいにできるのに
 実践種目(キレを求められる)になると全然点数が出ない

 

 

 

・1級を受かってテクニカル、クラウンといった
 プライズ検定になった途端にキレを求められて
 全然合格点が出なくなった

 

 

・アルペンをやっていた、
 フルカービング系の滑りの人が受かっていて
 基礎をしっかりやってきた人が受かりづらい気がする

 

 

 

 

といった声や、その逆で

 

 

 

・実践種目(キレを求められる)は良いと言われるけど
 低速種目(ズレを求められる)は全然出来ない

 

 

・低速やズレで滑りの改善を行っても実践的な滑りになると
 全く違う動きになってしまい活かせない

 

 

といった内容もありました。

 

 

 

 

ズレキレなのか?

 

キレズレなのか?

 

 

 

 

方向の違いはあれど、これらの意見に共通して言えるのは

 

 

 

ズレとキレに繋がりがない!
つまりズレとキレが同じ領域にいない!

 

 

 

 

という事です!

 

 

 

 

 

なぜ一般スキーヤーは低速でズレを練習しても、高速でのキレに繋がらないのか?

 

 

サポートメンバーの方に教えていただいたのですが、
まさにその内容が語られている動画をご紹介します。

 

 

 

それが志賀高原熊の湯スキー場のYouTubeで
今年技術選女子チャンピオンになった、春原選手と会話しているシーンです。
(4:20くらいまで)

 

引用:志賀高原熊の湯official チャンネル

 

 

 

 

この動画の内容を簡単にまとめると、

 

 

Q:技術選女王である春原選手は、普段どのような練習をしているのか?

 

            ↓

 

A:低速での基本練習をして、それを実践に落とし込んでいる

 

 

 

Q:上手な人は低速を高速につなげるのが上手い。
  一般的には低速を練習しても、
  その低速種目の練習になってしまい高速に繋がらない。
  どうすれば繋がりますか?

 

          ↓

 

A:プルークで上手にやろうとするより、
  どうゆう風にパラレルで活かそうと意識するかが大事

 

 

 

といった感じです。

 

 

 

 

因みに今回の場合は

 

 

 

低速種目=ズレ

 

 

実践=キレ

 

 

と考えといていただいて問題ないです!

 

 

さてあなたはこのやり取りを聞いて
どのように感じたでしょうか?

 

 

 

まさに春原選手の仰る通りで、プルークボーゲン(低速)を
ただやりさえすれば勝手にパラレル(実践)が上手くなる!
と思っているスキーヤーの方にとっては、とても重要な内容です。

 

 

 

なぜなら多くのスキーヤーの方はプルークの練習を
実践に活かそうとはしているけど、その活かし方が分からない…
といった感じではないでしょうか?

 

 

質問をされている方がとても良い表現をされているので
それを例えとして使わせていただくと

 

 

 

青信号(低速練習)から
 急に赤信号で止まれと言われても難しい
 (実践に活かせと言われても難しい)

 
 その間の黄色信号みたいなもの
 (低速から実践の繋ぎの練習)
 はありませんか?」

 

 

 

 

といった様に、青信号から赤信号になる事、(繋がりがある事)
は分かっているかと思います。

 

 

 

それでも急に止まれないから、黄色信号が欲しいんですよね?

 

 

それに対しての回答が

 

 

「青信号の時から赤信号になることを意識する事が大事だよ!
 (赤信号で止まる事を意識しながら青信号で進んでね)」

 

 

 

といった感じです。

 

 

 

これであなたが十分に理解して
本当に低速練習を高速練習に
繋げられるのであればOKです!

 

 

 

ただ、

 

 

「言っている事は分かるけど
 具体的に何をしていいか分からない」

 

 

「ちゃんとその意識は
 持っているんだけど出来ない…」

 

 

「結局黄色信号は何をすればいいの?」

 

 

といった感想の場合は結局同じ結果になってしまいます。

 

 

意識はしているけど具体的な黄色信号(繋げ方)が
やはり欲しいという場合はどうすればいいのか?

 

 

 

スキーの低速練習を高速に繋げる黄色信号はあるのか?

 

 

ずばり結論から言ってしまうと
黄色信号となる練習を生み出すには

 

 

<1>順序

 

 

<2>具体性

 

 

 

の2つが必要になります。

 

 

1つ目の【順序】は、まさに春原選手が仰っている内容に近いです。

 

『低速種目(プルークなど)を行うから実践が上手くなる』

 

といった

 

低速 → 実践

 

という順序ではなく,

 

 

『実践で出来ない事がある、では低速で出来るか試す』

 

といった

 

実践 → 低速

 

という順序がまずはとても重要です。

 

 

そして低速出来るようになれば、
それを実践で繋げるといった

実践 → 低速 → 実践

という順序が基本となります。

 

 

まさに今回紹介している動画も、この流れを通っていますよね。

 

 

 

 

以前から重要だとお伝えしている、
達成したい目的から逆算して考える
『逆算思考』がまさにこれです。

 

 

 

ただここまでは、何となく意識している
スキーヤーの方は多いはずです。

 

 

 

そこで重要となってくるのが2つ目の【具体性】です。

 

 

 

この部分が欠落しているケースが圧倒的に多いです。

 

 

例えば今回出てくる信号機の例の場合、
赤信号で急に止まれない原因は何なのかによって
青信号で意識する事が大きく変わるわけです。

 

 

 

前方不注意で赤信号で止まれないのなら、
青信号で意識する事は

 

 

『前方から目を離さない』

 

『ナビを付けない(目線をそらさない)』

 

『シートを調整して前方を見やすくする』

 

 

といった前方不注意を防ぐ内容を、意識しなければいけません。

 

 

 

ブレーキペダルを踏むのが遅いのであれば

 

 

『足の置き場をアクセルからブレーキをすぐ踏める位置にする』

 

『左足を既にブレーキペダルに乗せておく』

 

『ワンペダル走行の車に変える(アクセルペダルを離せばブレーキ)』

 

 

 

といった対策に違いが出てきます。

 

 

この様に低速種目を行うにも
高速種目で出来ない事の原因の具体性が無ければ、

 

『何となく一般的にこういう練習が良いとされているから』

 

と理由で行ってしまい、結果として低速種目が
実践に繋がらないケースが殆どです。

 

 

 

スキーでよくあるのは

 

 

・角付けのエラーなのに
 低速で荷重練習をしている

 

・実践で行いたい荷重方法と
 低速で行っている荷重方法が別物

 

・実践で求められているポジションと
 違うポジションで低速練習をしている

 

 

 

といったケースが多いです。

 

この様に

 

 

『実践でのエラーの原因を、具体的に見つけだす』

 

       ↓

 

『その原因は低速種目で行う方が解決しやすいのであれば
 低速種目でまずは練習してみる』
 (低速種目の方が難易度が上がるケースもあるので注意)

 

       ↓

 

『低速種目で出来るようになれば、
 徐々にスピードを上げても出来るか試す(実践)』

 

 

 

といった矢印(順序)と具体性を考えて実践するプロセスこそ
今回のテーマの肝となる“黄色信号”になります。

 

 

 

残念ながら全スキーヤーにとって、黄色信号にあたる種目があり、
それをやれば低速が実践に繋がるよ!というものではないという事です。

 

 

 

ですから春原選手も意識や考え方という回答をしましたし、
私も黄色信号が“在る”とは言わず、“生み出す”と表現したのもこの為です!

 

 

ぜひあなたにとっての黄色信号を
生み出してくださいね!



とここで終わればまとまるのですが、
そうならないのがスキーの厄介なところです。

 

 

 

これまでの話で、多くのスキーヤーが気づけていない
盲点をあなたは分かりますか?

 

 

 

ある事が前提となっているという言い方もできます。
パッと思い浮かんだら凄いです!
なぜならスキー界ではほぼ言われてない部分だからです。

 

 

 

 

スキーの雪上種目を行う前に前提を満たしているか?

 

 

 

実践 → 低速 → 実践 という流れで
具体的な練習をすれば上達に繋がるスキーヤーの前提は何でしょうか?

 

 

 

それは

 

 

 

その動作ができる身体である

 

 

 

という前提です。

 

 

はい、いつも一貫してお伝えしているテーマですね!

 

 

多くのスキーヤーの方は、そもそもその動作が出来る
身体の状態ではないケースが殆どです。

 

 

 

しかしそれに気づかないまま、一生懸命雪上で

 

実践 → 低速 → 実践

 

といった形で練習をしています。

 

 

 

この盲点に気づけると、もしかしたら自分は
実践 → 低速 → 陸上 → 低速 → 実践
といった形でもう1段階必要なのでは?
という部分が見えてきます。

 

 

 

因みにスキー界の練習法(上達法)は
ほぼ全て『その動作が出来る身体』前提の情報です。

 

 

 

SKIER`sLABでも実際滑りの映像を通して
色々解説をしておりますが、
ここだけの話、あの内容を理解するより
再現出来る身体になる方がよっぽど重要です。
(自分で解説しておいてなんですが(笑))

 

 

 

『低速を実践に』『ズレとキレに』
色々と悩むかと思いますが、
その一つ手前の『陸上を雪上に』
これこそはじめの一歩だという事を忘れないで下さいね!