スキーのターン前半が失敗する理由は『長い軸』と『外向傾』を選択するから?359
目次
2つのターン前半を理解したら…
前回の記事で
今回ターン前半の特集を組んだ
理由の一つである
ターン前半の長い軸と
ターン前半から外向傾をとる事が
整理できていない指導や
アドバイスのせいで
上達のチャンスを潰されている
スキーヤーが多い
といった内容を
お伝えしました。
残酷な真実!ターン前半を指導されても上達しないスキーヤーがいる理由は? 358
目次1 実はアルペンスキー界でも起きているターン前半問題2 アルペンスキー王者マルセル・ヒルシャー選手から学ぶターン前半の使い分け3 一般スキーヤーにターン前…
以前メールマガジンでも
同じような内容を
配信したのですが、
読んだ方たちから
「私もまさに
メールで戴いた内容の
状態でした!」
といった内容のメールを多くいただき、
改めてこの様な状況で
スキー上達を阻まれている
スキーヤーの方が多いんだなと
実感しました。
今回配信した内容を通して
少しでもそういったスキーヤーの方達の
助けになれば嬉しいです。
今回の記事は
ターン前半の特集をした
2つ目の理由です。
以前youtubeで配信した
【どちらが正解?
2つのターン前半は
まるで違う動作なのか】
の内容や、
これまでのブログを通して
あなたは
・ターン前半の長い軸
・ターン前半からの外向傾
をどのように整理したでしょうか?
多くの場合、
「結局両者とも
メリット・デメリットがあるから
好みや、その時の状況に合わせて
使い分ければいいのでは?」
「両方とも練習する
意識を持つようにしよう!」
といった結論に着地します。
その考えは勿論正解なのですが、
見落とさないで欲しい
大事な部分があります。
それは
使い分けることが
出来る人限定の話
という事です。
どちらのターン前半も
思い通り出せるのであれば、
好みや状況によって
使い分けていくイメージで
問題ないと思います。
ただ、多くのスキーヤーの方は
この2つを正しく使い分ける事が
出来ていません。
なぜ多くのスキーヤーの方は
この長い軸と外向傾を
使い分けられないのか
簡単にお伝えしていきます。
ターン前半を『使い分ける』という事の勘違い
そもそも『使い分ける』と聞くと
どのようなイメージを持つでしょうか?
AとBがあって(2択でなくてもいいですが)
そのどちらかを選択していく
イメージかと思います。
しかしここで勘違いしがちなのが
『使い分ける』事と
『選択する』事の混同
です。
この2つは一見似ているのですが
前提が違います。
例えば紙を切る時に、
はさみとカッターがあって
その紙の厚さや、
どのような切り方をしたいかによって
ハサミを選ぶ事は
『選択する』事でもあり
『使い分ける』事でもあると思います。
でも小さな子供が
ハサミしか使えない場合、
ハサミとカッターがあって
ハサミを選ぶ事は
『選択』はしていても
使い分けているわけでは
ありませんよね?
要は選ぶと言っても
どちらも選べる前提で
Aを選ぶのと
Aしかできないから
Aを選ぶのとでは
似て非なる状況
だという事です。
今回のターン前半でいえば
『どちらも出来るけど
長い軸を選択する』
『自分は長い軸の方が好みだから
ターン前半からの外向傾は
出来なくても問題ないとして
長い軸を目指していく』
似ているようで違うんです。
少し小難しい話になりましたが
『使い分ける』
と
『選択する』
この2つは
その人の前提よって変わる事が
まずはおわかりいただけたでしょうか?
そして多くのスキーヤーの方が
使い分けるのではなく
こっちの滑りを目指そうと
“選択”してしまっているんです。
「えっ、でもターン前半の
長い軸の滑りが理想だから
ターン前半からの外向傾が
出来なくても問題ないのでは?」
と思ったかもしれません。
確かに先ほどの
ハサミとカッターの例ですと
『紙を切る』という
目標を達成できるのであれば
別にハサミしか使えなくても
問題ないのでは?
と言えますよね。
ではなぜ
ターン前半の長い軸と外向傾は
使い分けるのはいいけど
選択するのはまずいのでしょうか?
ターン前半の『長い軸』と『外向傾』に対する1番の誤解
別に長い軸で深い傾きをする滑りが
目標だから、ターン前半からの
外向傾は出来なくてもいい
この考え方こそ
多くのスキーヤーの方が持つ
大きな誤解なんです!!
上記の様な
『長い軸が好みだから
外向傾は出来なくてもいい』
という考え方は
言い方を変えると
長い軸と外向傾を
同列のものと捉えています。
同列と言われても
いまいちピンと
来ないかもしれませんので
またジャンケンを例に出して
説明しますね。
以前お伝えしたような
心理学や身体的要素を抜きにすると
グー、チョキ、パーの強さは
同列ですよね?
グーだけチョキとパー両方に勝てて
あとの2つはどちらかにしか勝てない
といった絶対的な強さの違いはありません。
違う言い方をすれば
グーしか出せなくても
ジャンケンを1回するのであれば
強さは変わらないという事です。
(何回もすると
この人グーしか出さないと
バレますがw)
つまり
他のチョキ、パーが
手で作れなくても
ジャンケンで勝つことができる
という事です。
これは前回のハサミとカッターで言うと
ハサミしか使えなくても
紙を切る事は出来るので
シンプルに『紙を切る』という
目的に対してだけ言えば
ハサミもカッターも同列です。
この話を先ほどの
スキーに当てはめると
ターン前半の長い軸が出来れば
ターン前半の外向傾ができなくても
自分の目的とする滑りは
長い軸のターン前半だから問題ない
というのも同列です。
しかしこのターン前半の
長い軸と外向傾は
ジャンケンのグー、チョキ、パーの
同列のものを選択するのとは
少し違うんです。
なぜなら何度もお伝えしていますが
ターン前半の長い軸と
ターン前半からの外向傾は
繋がりのあるものだから!!
です。
もう少し詳しく言うと
片方を土台として
もう片方は発展系
です!。
さてターン前半の長い軸と
ターン前半からの外向傾、
どちらが土台で
どちらが発展系でしょうか?
ターン前半の土台はどちらか?
例えばスキー初心者の人が、
「私は板を揃えて滑るのが理想だから
その板がハの字になる
プルークボーゲンは
出来なくてもいいです!」
と言っていたらどうでしょうか?
(そんな人見たことないですがw)
これはパラレルと
プルークボーゲンを
“同列”して捉え
“選択している”状態です。
しかし、このように言われたら
「いやいやパラレルになる為に
まずはプルークボーゲンで
練習していきましょうね」
となりますよね。
プルークボーゲンという土台があって
パラレルターンという発展系に
繋がっていくわけです。
もちろんどちらも出来るようになると、
普通に滑る時はパラレルでも
状況によっては
プルークスタンスを選ぶといった様に
“使い分け”になっていきます。
実はそれと同じように
ターン前半の長い軸と
ターン前半からの外向傾も
土台と発展系なのですが、
意外と同列に捉えてしまっている
ケースが多いです。
ではまず解決しておきたい
ターン前半の長い軸と
ターン前半からの外向傾
どちらが土台で
どちらが発展系なのか?
これは予想がついていると思いますが、
ターン前半からの
外向傾が土台で
ターン前半の長い軸が発展系
です!
⇩
ではなぜ外向傾が土台で
長い軸が発展系なのか?
という今回最大のテーマに
触れていきたいと思います。
この答えを出すには
当然ですが
土台と発展を決めている要素
を導き出すことが
重要になります。
例えば今回何度も例に出てきている
ジャンケンを例にして考えてみましょう。
まだジャンケンをしたことない
小さな子が最初にやるべき事は
何でしょうか?
まずは指を握ったり開いたりする
運動を覚える事からですよね?
つまり
グー、パー運動が土台
となるわけです。
その発展系として
親指、薬指、小指は曲げて
人差し指、中指は伸ばすといった
分離運動になっていきます。
今回じゃんけんの
土台と発展を決めている要素は
身体動作の特徴でした。
この事から分かるように
「チョキを出せれば
グー、パー出せなくても
ジャンケンできるよね?」
という考えと
「パーを出せれば
グー、チョキ出せなくても
ジャンケンできるよね?」
という考えは
両者とも理論上は正解なのですが
現実問題、後者は可能ですが
前者は身体の構造上難しい
という事になります。
これと同じように
「長い軸をとる滑りが
目標だから、ターン前半からの
外向傾は出来なくてもいい」
という考えと
「ターン前半からの外向傾が
目標だから、
ターン前半に長い軸をとる滑りは
出来なくてもいい」
も両者とも理論上は正しいのですが
現実問題、前者は難しいんです。
ではジャンケンと同じように
スキーでは
ターン前半の外向傾が土台で
ターン前半の長い軸が発展だと
決めている要素は何でしょうか?
ターン前半の土台と発展を決めている重要要素は?
土台と発展を決めている要素は
1つではない為
たくさんの正解があっていいのですが
『その答えにたどり着いた要素は何か?』
といった部分は
明確にしておいた方が
スキー技術を整理するうえでは
重要となります。
①身体要素
例えば、先ほど例に出した
ジャンケンで言えば
人間が習得していく指の運動が
グーパーから始まり
その後チョキが出来るようになるといった
身体要素が
グーパー土台でチョキが発展系
という順序を導き出した理由です。
因みにこの考えをベースに
人間は立位がベースだから
外向傾やひねりなどの前に
まずは正対で板の上に真っ直ぐ立つ
いわゆる棒立ちの様な滑りを
土台として考える指導者もいます。
もちろんその流れで
スキーが上達していくるのであれば
その方にとっては
問題ないのですが、
なぜ多くのスキー強豪国が
外向傾を基本としているのか?
については
きちんと理解しておく必要があります。
因みに余談ですが
身体要素も色々な角度から見ると
立位がベースとは限りません。
話し出すと恐ろしく
長くなる自信があるので
ちょっとにしておきますが
面倒な方は読み飛ばしてください(笑)
小さい子のジャンケンのように
人間の動作習得(身体要素)を
ベースに考えるなら
赤ちゃんから振り返るので
基本は立位ではないですよね。
引用:一般財団法人日本コアコンディショニング協会
寝返り、ずりばい(はいずり)、
お座り、ハイハイ、立位です。
(お座りとハイハイは
逆のケースもあります)
さて外向傾の動作と
赤ちゃんの動きの
関連を見ていきましょう!
外向傾は股関節の
内旋、外旋(ひねり)、
屈曲、伸展(曲げ、伸ばし)
外転内転(開く、閉じる)
のミックスです。
イメージしやすい例で言うと
ちょっと前に流行った
開脚してベタッと床につく前屈は
股関節の
外転(開く)
屈曲(曲げる)
外旋(外ひねり)
ですね。
外向傾は
外脚(内旋、屈曲、外転)
内脚(外旋、屈曲、内転)
となります。
赤ちゃんが寝返りからお座り、
ハイハイ、までで
かなり股関節を使います。
(外旋ベースであまり内旋はしませんが)
またつかまり立ちをして
よろよろと横に倒れる時は
よくスキーヤーが行う
壁や机に手をついて
内側に傾いてとる外向傾姿勢に近い事から
考え方によっては
外向傾の方が立位よりも
土台ともいえます。
小さい子は股関節からの外向傾なんて
何の苦労もなくとれますし、
脇を持って横にスライドしてあげれば
ワールドカップレーサーの外向傾です(笑)
いろいろ小難しく
書きましたが、
何が言いたいかというと
赤ちゃんの頃かから遡れば
立位よりも股関節をいっぱい
動かす動作習得の方が早いので
外向傾の方が土台と考える事もできる
といった内容です!
(かなり無理やりですが)
さて話も本題に戻して
身体要素では
ターン前半からの外向傾が土台
ターン前半の長い軸が発展系
という考えが分かりづらいので
別の要素から見ていきます。
②滑走スピード
まず分かりやすいのは
滑走スピードです。
ターン前半からの外向傾と
ターン前半の長い軸、
どちらが滑走スピードが
必要となるでしょうか?
さてこの答えが
簡単に分かる方法があります。
それは滑走スピードを
ゼロにして考えてみる事です。
要はその場で止まっても
できるかどうかですね。
イメージしてもらうと
分かると思いますが、
ターン前半の長い軸は
内脚に乗れば多少
板の傾きは作れますが、
基本的には外力が無いと
倒れてしまいます。
その場で止まっているという事は
外力は下方向の重力しかないので
殆ど板の傾きは作れませんよね?
一方外向傾の方は
上手くバランスをとって行えば
止まった状態でも
板の傾きを作る事が出来ます。
この事から
ターン前半からの外向傾は
低速でも出来るのに対して
ターン前半の長い軸で
板を傾けて行くのは
深くなればなるほど
高速域で外力が必要
となるわけです。
言わなくても分かると思いますが、
スキーは低速よりも高速の方が
技術が求められるので
滑走スピードという要素で見ると
ターン前半からの外向傾が土台
ターン前半の長い軸が発展
という理由が見えてきます。
これはあくまでも一例で
他の要素からも
理由を導き出す事が出来ます。
全てお伝えすると長くなりますので
今回はここまでにしておきますが、
もっと重要なのは
技術要素からみて土台と発展を
決めていく事だと思います。
あまり大きな声では言えないですが
日本スキー界の常識ですと
この技術要素の土台から発展が
少しおかしな状態になってます。
その部分については
次回の記事から解説していきますので
楽しみにしていてください。