アルペンスキーでタイムが速くならない原因!噛み合わないターン前半問題とは? #389

 

 

最近は技術選や基礎スキーの話が多かったので
久々にアルペンスキーのご質問を、深堀していこうかと思います。

 

この様に書くと

 

「よっ!待っていました!」

 

という声もある一方で

 

 

「あっ、私は基礎スキーヤーだから関係ない」

「まだまだ技術レベルの低い私には関係ない」

 

なんて思うかもしれませんが、全くそんなことはありません!

 

 

これは基礎スキーは勿論の事、プルークからパラレルになりたいという
技術レベルのスキーヤーにも、関係してくる内容です。

 

それがタイトルにもある

 

『ターン前半問題』

 

です。

 

 

これまでに何度も

 

・ターン前半は重くする
・ターン前半からしっかり乗る
・ターン前半でエッジングをして後半は解放

 

といった技術論について誤解がある、という内容を解説をしてきましたが、
まだまだ食い違いや勘違いしているケースが多いの
1度ここでガッツリ整理したいと思います。

 

 

 

あなたにとってのスキーターン前半はどっち?

 

よくスキーの指導で

 

「ターン前半からしっかり乗ってきましょう!」

「ターン前半からエッジングをしっかりしましょう!」

 

といった指導は、幅広い技術レベルで言われる事です。
そしてアルペンスキーにおいても

 

「ターン前半もっと早く捉えてこい!」

 

「ターン前半からしっかりエッジングをして来い!」

 

といった指導がよくあります。

 

 

今回まず考えて欲しいのは、

 

あなたにとってのターン前半は
この後紹介するどちらイメージか?

 

 

という部分です。

 

 

“どちら”と表現している様に、
実はターン前半には大きく2つの考え方があります!

 

そしてタイトルにもあるように、そこが噛み合ってないから
スキー上達を妨げる負のスパイラルに突入します。

 

 

ではその2つのターン前半とは何か?

 

それは

 

 

スキーヤー位置

板の向き

 

 

です!

 

 

この2つのワードを聞いて、一瞬で理解できたのであれば
ターン前半、後半といった概念に対して
かなりの精度で整理できている証拠です。

 

 

一見難しく聞こえるかもしれませんが、
実はとっても簡単な内容なので
ぜひ頭の中でイメージしてください。

 

 

よくターンの前半、後半といったタイミングを、
分かりやすくするために時計の時間が用いられますよね?

「ターン前半1時、2時のタイミングで!」

「ターン後半の4時では!」

といった感じですね!

 

ではここからが“とってもとっても”重要な質問です!!

 

 

あなたにとってターンの3時、9時は
板がどこを向いているでしょうか?

 

 

多分フォールライン、斜面の下を向いている
答えるかと思います。

 

は6時の時は板がどこを向いているでしょうか?

 

 

もちろんフォールライン、斜面に対して
90°の向き真横ですよね!?

 

えっ?違いますか?(笑)

 

 

だって板が時計に沿うように進んでいったら
3時、9時ではフォールライン(真下)
6時では真横に向きますよね?

 

 

でも多くのスキーヤーの板はほぼ間違いなく、
真横まで向かずに斜滑降(斜め)を向いて滑っています。

 

 

という事は全てのスキーヤーは
6時がないという事でしょうか?

 

 

そう聞かれると、即座に「その通りです!」とは
言えないケースがほとんどです。

 

さてここまでを通して
少しずつ全貌が見えてきたでしょうか?

 

ここが食い違いが起こる、はじめの一歩です!

 

 

スキーのターン局面の基準は板の向きか?スキーヤーの位置か?

 

さてここまでを通して、ターン局面の話をする時に、
実は2つの基準値で語られていることが見えてきました!

 

それが

 

・スキーヤー位置

板の向き

 

です!

 

一般的に3,9時の局面は
板がフォールラインを向くと、考えられている一方で、
6時の段階では板は真横を向いていないと考えられている…

 

 

この部分が不思議な事がまず整理できたでしょうか?

 

 

板の向きで時間を判断しているなら
下記の画像の様になるはずです。

 

でも実際のターンは、3時、9時はそうであっても
切り替えの局面である6時は
こちらの画像の様に板が斜めですよね?

 

 

板の向きで考えれば『ターン局面に6時はない』
という事になるのですが、一般的にそうは考えられていません。

 

つまりどこかのタイミングで『板の向き』の話から
『スキーヤーの位置』の話に切り替わっているという事です。

 

 

因みにスキーヤーの位置だけで考えるのであれば
横滑りで滑っていても、ターンの●時、●時の位置と表現できるので、
3時、9時で板が真横を向く事も、可能と言えば可能です。

 

板の向きが変わっていないので
これをターンと呼べるかは分かりませんが
下記の画像の様な状況ですね!

 

逆にこの画像の場合、『板の向き』でターン局面を考えたら
ずっと6時でターンしていることになってしまいます。

 

 

さてここまでで、ターン局面であるの●時は
『板の向き』『スキーヤーの位置』という2つの基準があり、
それがなぜか一般的に混在しているという事が、
お分かりいただけたでしょうか?

 

簡単に言ってしまえば、
ターン前半からターンMAXくらいまでは『板の向き』
切り替えの時の局面は『スキーヤーの位置』ですね。

 

 

ただこの様に細かく前提を見直さなくても
共通認識で問題なく伝わっているので良いのでは?
と思うかもしれません。

 

 

確かにその通りで、
ターン全体で見れば食い違いはあまり起きていません。

 

 

しかし“ターン前半だけ”を見ると、この2つの前提が
混ざりあっている事で大きな混乱を生んでいます!!

 

 

アルペンスキーにおけるターン前半の食い違い問題

 

 

さてここでアスペンスキーの話に戻りましょう!

 

アルペンスキーではよく、次の旗門に遅れないように

 

「ターン前半にもっと早くエッジングをして来い!」

「ターン前半の捉えを早く!」

 

といった指導が入ります。
基礎スキーや一般の指導でもありますね!

 

 

さてここで『板の向き』『スキーヤーの位置』を区別しないと、
大きな食い違い起こるのが分かるでしょうか?

 

 

 

こちらの画像のA、Bを見比べて下さい。

スキーヤーの位置としては、ターン前半の1時、2時の局面です。

でも板の向きとしてはAはスキーヤーの位置と同様に
1時、2時ですが、Bはすでに4時くらいですよね?

 

 

つまりBはターン前半とも後半ともいえるわけです!

 

 

あなたはターン前半に早くエッジングをして来いと言われたら、
どちらのイメージを持つでしょうか?

 

 

 

アルペントップ選手たちが使うターン前半のテクニックとは?

 

ターン前半に早くエッジングをして来いと言われたら、
多くのスキーヤーはAのイメージで動作をしてしまいます。

 

 

その理由としては

 

「Bだとブレーキ動作になる」

「板を横に振るなと言われる!」

 

といった感じですね!

ただ1つ考えて欲しい事があります。

 

 

それは

 

 

 

どんな状況で

「ターン前半にもっと早くエッジングをして来い!」

という指導が入るのか?

 

 

 

 

という部分です。

 

 

きっとアルペンスキーで言えば、次の旗門に入れない、(遅れる)
基礎スキーや一般スキーにおいても、ターン後半にズルズル落ちてしまう
といった感じかと思います。

 

 

さて先ほどのAの状況でエッジングをしても板の軌道は、
基本的に時計と同じ流れを通るかと思います。

 

しかしBですと板の向きは既に4時を向いているので、
ターン軌道が変わるのが分かるでしょうか?


 

 

もしこの位置にポールがあったら、
Aのターンイメージだと確実に遅れてしまいますね!

 

 

ここでワールドカップトップレーサーのクリストファーセン選手が
Facebookで投稿していた画像を紹介します!

いかがでしょうか?

 

 

「いかがって言われても…」

 

 

と思われた場合の為に、
もう少し分かりやすくしたのがこちらです。

 

 

この画像の場合、クリストファーセン選手の板の向きと
時計の3時の向きが合ってしまっているので
一見Aのイメージに見えるかもしれません。

 

 

しかし無数に残っている
板の跡(シュプール)を見るとどうでしょうか?

 

 

Bと同じように、ターン前半の局面で、
既にターン後半方向に板は向いているのが分かりますか?

 

 

それでも分かりづらければ、
こちらの画像ならどうでしょうか?

 

これならかなり分かりやすいですよね!

 

 

板の向きは1時の位置で、既に4時の向きです。

 

 

しかし2時、3時の移動をしていっても、
板の向きはそのままでターンをしていますよね!

 

 

さてこの1時の局面は
ターン前半ですか?
ターン後半ですか?

 

 

これは説明しなくても大丈夫かと思いますが、
スキーヤーの位置が基準なら『前半』
板の向きが基準なら『後半』ですね!

 

 

因みにこれが絶対的な正解ではなく、
通りたいラインによって使い分けなくてはいけないという事です。

 

 

ワールドカップの映像を見ると
所々でこの動作を行っているシーンがあります。

スタートしてからしばらくは、
板の向きが時計の局面と一致するように
滑らかにターンをしていきます。

 

それがカメラが切り替わる11:27の急斜面に入ると、
今回お伝えしているターン前半の位置で
板の向きはターン後半になるのが分かるでしょうか?

 

 

マニアックすぎて分かりませんか?(笑)

 

 

それならこちらの動画は
とってもわかりやすいです!

 

人気YouTubeチャンネルチーム金閣寺の企画で
基礎スキーのトップ選手達が、GSを滑っている映像です。

 

 

テロップで

 

「ワールドカップばりの高度なテクニック」

 

と出ているので、分かりやすいかと思います。

 

 

 

さて話がややこしくなってきたので
ここまでの流れを一度整理すると、

 

______________

『ターン前半早めのエッジング』
と一言で言っても、

A:板の向きとスキーヤーの位置の
ターン局面が一緒

B:板の向きとスキーヤーの位置の
  ターン局面が違う

という2種類があるよ!

 

 

_____________

ワールドカップ選手でも、急斜面やセットが振ってあって、
ラインを変えなきゃいけないときは【B】を使っているよ!

_____________

 

 

_____________

あなたが指導者からターン前半の事を言われたり、
意識をしているとしたらA,Bどちらの事か
正しく整理できていますか?

_____________

 

という流れですね!

 

 

因みに技術選といった基礎スキーにおいては
関係ないように思えますが、
実はしっかりこのBの技術を使っています!

 

 

 

アルペンワールドカップレーサーと一般スキーヤーの決定的なターン前半の違い

さてここまでの内容で

「ターン前半早めのエッジングをしろ!」

と言っても、

 

・板の向きがターン前半のままなのか?

・局面はターン前半でも、もう板の向きはターン後半なのか?

 

これによって、目的の動作が大きく異なるという事が
分かってきたかと思います。

 

しかし、アルペンスキー界では
ターン前半に板の向きを変えると

・ブレーキ動作になる

・板を振ってはいけない

 

と言われているのも事実です。

 

 

しかしワールドカップのトップ選手達ですら
急斜面やセットが振っていて間に合わないときは
ターン前半にもう板の向きをターン後半に変えています。

 

 

当たり前ですが、
板の向きがターン前半の向きのままエッジングするよりも
板の向きをターン後半に向けてエッジングした方が
ターン弧が小さくなるからです。

 

なぜトップ選手達が行うと高度な技術とされるのに
一般スキーヤーが行うとNGなのでしょうか?

 

 

もうお分かりかと思いますが、いつも言っている領域違いというやつで
ワールドカップレーサー達と、一般的スキーヤーが行っている
【板の向きを変える】という動作の質がまるで違うからです。

 

 

板の向きを変える動作とは、
どのような動作をあなたはイメージしますか?

 

板の向きを変える動作は色々ありますが、
大きく分けると【角付け】【回旋】です。

 

 

直滑降していて板を傾けると
エッジが噛んて板の向きが変わっていきますよね?

 

 

その一方で回旋動作を行っても
その場でクルっと板の向きが変わります。

 

 

実はターン前半に板の向きを変えるといっても、
この2つのどちらがメインになっているかで、
結果は大きく違うわけです。

 

 

因みにワールドカップレーサー達が行っているのは
減速要素が少ない回旋ベースの板の方向変えです!

 

 

ほぼ不可能に近いですが、
直滑降していてエッジを噛まさずに(角付けせずに)
板の向きを変えれば(回旋)ほぼ減速せずに
そのまま下に流れていきますよね?
(もちろん瞬ですぐに横滑りか逆エッジかでブレーキ動作が入りますがw)

 

 

しかし角付けの場合は、雪面に板が食い込むため、
ブレーキ動作を用いて板の向きを変える事になります。

 

 

だからアルペンスキー界では
ターン前半に板の向きを変えると

・ブレーキ動作になる

 

・板を振ってはいけない

 

と言われるわけです。

 

 

もちろん回旋を意識しているスキーヤーの方も
なかにはいるとは思います。

 

 

ただ多くのスキーヤーは

 

回旋と角付けや荷重が混同しています…

 

 

ですから回旋させたつもりがブレーキ動作
逆に何もしないとラインが変わらず暴走

というどちらを選択してもエラーという
負のループに入るわけです。

 

 

常々お伝えしている様に、荷重、角付け、回旋は
算数で言う所の足し算、引き算なのに
この基本をきちんと区別して教えてもらう機会がない為、
自分がイメージしている事と違う動作を行っています

 

 

現にジュニアレーサー達は、
フルカービングでピュンピュン滑るのはとても上手でも(角付け主体)
横滑りから横滑りといった動作が(回旋主体)
あまり得意でない選手が多いです。

 

 

U16日本代表合宿のこちらのシーンを見れば
よく分かりますね!

まぁ混同していても滑る事が出来るくらい
道具の進化が素晴らしいという見方もありますが(笑)

 

ターン前半のイメージが整理できたとしても、
基本動作が整理できてないと、
パフォーマンスにはあらわれないので気をつけてくださいね!

 

 

因みに今回の内容はYoutube動画にもまとめてありますので
上手く頭の中でイメージ出来ない場合は、こちらも一緒にご覧下さい!