スキー検定(バッジテスト)に何が起きている?小回り技術の時代の変換期、ズレとキレは別物か? #390
ここ数年にわたり、
スキー検定(バッジテスト)や、全日本技術選手権において
ある大きな変化が起きている事に、気づいているでしょうか?
それが
『小回り』
です。
あなたにとって小回りのイメージは、
どのようなものでしょうか?
目次
スキー界で変化している昔の小回りと今の小回り
最近の技術選の小回りは、先ほどの画像の様に
「えっ?中回りでは?」
と思うような大きなターン弧で滑ってきます。
少し前までは
『脚部のひねり』
『逆ひねり』
といったひねり要素が小回りのベースでした。
…と文章で書いても
イメージしづらいかもしれませんので、
YouTubeで小回りの歴史が分かる内容を
投稿してくださっている動画をご紹介します!
【1990年技術選急斜面ウエーデルン佐藤譲】
【2001国際スキー技術選】
【2011 全日本スキー技術】
【2024全日本スキー技術選手権大会 小回り】
私もこうやって歴史をたどってみる機会はあまりなかったので、
改めて道具の進化や、それに伴う求められる滑りの変化など参考になりました。
時代が進むに連れて明らかに
ターン弧が大きくなっていますよね!
最近では『リズム変化小回り』という
小回りのリズムを変えて滑る種目があるのですが
これこそまさに
「小回りなのか?」
といった感じです(笑)
【2024全日本スキー技術選手権】
さて色々と小回りの歴史を見てきましたが、
まずお伝えしておきたいのは
__________________
昔の小回りがダメで
今のターン弧の大きい小回りが良い
というわけではない!
__________________
という事です。
そんなこと思ってないかもしれませんが、
スキー検定でもテクニカル、クラウンといった
プライズ検定ではひねりを用いた幅の小さい小回りより
カービングショートと呼ばれるような
幅の広いカービング主体の小回りの方が
年々点数が出るようになってきています。
私のところにくる質問も以前は
「小回りで脚部が捻れない」
「逆ひねりをどうすれば出来ますか?」
といった内容でしたが、最近では
「キレのある小回りはどうすれば出来ますか?」
「今はフルカービングでのショートターンでしか
評価されないのでしょうか?」
といった質問が増えています。
最後の質問にある、
検定はカービングでのショートターンでしか評価されないのか?
という点については
「検定員による」
という事らしいです。
正直言って検定なのに評価基準が違うのは
どうなのかと思いますが…(苦笑)
スキー小回りが変わった理由は上達のプロセスが違うから?
ここまでで紹介した小回りの変化を理解する上で、
分かりやすい動画をご紹介します!
こちらがその動画です。
スキーグラフィック2021年4月号の特集でも
柏木義之さんがその事に触れていますので、
興味がある場合はそちらも読んでみると面白いかと思います。
上記の動画にあるフルカービングの方はまだしも
ズレの方はもはや中回りに見えますが、
このターン弧を検定で小回りとして行ったら
きちんと評価してもらえるのか気になるところです。
(これも検定員によるのかもしれませんが)
ただひねり系の小回りをしている方で
技術選予選や検定で評価されませんでした
というメールは結構いただきました。
ひねり系はひねり系で、技術を要する滑りなのですが(汗)
さて話を戻して、上記の動画内でも言われている様に
上達のプロセスそのものが今と昔では大きく違います。
まず確認しておきたいのが、あなたにとって
「フルカービングとズレ、
どちらがスキー技術のベースにありますか?」
という部分です。
言い方を変えるなら、
『どちらをベースに上達してきましたか?』
という事ですね。
これはシンプルにどんな道を歩んできたかという事で
どっちが良い悪いではないのですが、
一般的に多くのスキーヤーは、ズレをベースに練習して
その発展形がキレ(フルカービング)といった流れです。
しかし最初からカービングスキーを履き、ズレの練習をしてこなかった場合、
意外にもキレ(フルカービング)が技術の核となっているケースは少なくありません。
私には子供が二人いるのですが、
現に長男(7歳)はコブ以外の整地は基本フルカービングですし、
次男(4歳)もプルークスタンスですが、
既にフルカービング要素で滑っています。
そして私自身も大学生からスキーを本格的に始めたのですが、
その当時は既にカービングスキーでしたので、
もうパラレルスタンスになる頃にはフルカービングベースでした。
この様に聞くと、
「フルカービングベースの方が良いってことですか?」
と思われたかもしれませんが、それは大きな誤解です。
フルカービングベースでもデメリットはたくさんあります。
例えば代表的なデメリットは、
コブや不整地といったフルカービングでは滑れない斜面に
対応できないという部分です。
今のジュニアアルペンレーサーの多くは
フリースキーを見ていると、
フルカービングでビュンビュンとばす滑りが多いです。
ですからコブが苦手だったり、非圧雪バーンになると
途端に滑りが不安定になったりします。
そして何より、年齢が上がりラディウスが大きい板になると
(板のくびれが少なくなると)
途端に成績が悪くなる選手も多いです。
今回はジュニアのケースを例に出しましたが、
普段の滑りのベースがフルカービングでしたら大人でも同じです。
レース上がりで技術選やスキー検定といった、基礎スキーに転向すると
苦戦するのがコブ(不整地小回り)
そして昔は小回り(今と違ってひねりベースだったので)といった感じですね。
逆に大回りや総合滑降といった
フルカービングで滑るスピード系は強い印象です。
さて話が色々な方向にとびましたが、
要はキレ(フルカービング)をベースにその後ズレを覚えていくケースが、
今のジュニア達には多く、それは子供に限ったことではなく
そういった環境は大人でも当てはまるという事をお伝えしました。
そしてこの場合、当たり前ですが、
きちんとズレの練習をする必要があります。
ただそのような意識をしていなくても、
コブや非圧雪バーンといった不整地を滑る事や、
ゆっくりと滑り降りなければいけない状況において
半強制的にズレの練習をしているケースが多いです。
ではズレベースで上達してきている場合は
どうでしょうか?
スキー小回りをひねりやズレベースで上達してきた人のデメリット
ズレベースでの滑りで上達してきた場合、
デメリットとしては、キレ(滑走性)のある滑りが出来ずに、
・アルペンだとタイムが上がらない
・基礎系だと点数が出ない
といった感じになります。
因みにゲレンデをただ滑り降りるなら
別にフルカービングで滑る必要性はないです。
(でもフルカービングは気持ちいいですけどね!)
ではズレがベースで上達してきた結果、
このキレ(フルカービング)で、滑れない人はどうすればいいのか?
当たり前ですが、
キレベースの人がズレを練習するように
ズレベースの人はキレを練習すればいいだけです。
…
…
…
と言ってしまうと話は終わってしまいますが(笑)
本題はここからです。
あなたはズレの練習といわれて、
どのようなものが思い浮かびますか?
例えば横滑りで降りる、
プルークファーレンの様に足を押し出して板をズラすなど
色々あるかと思います。
ではキレの練習はどうでしょうか?
多くの場合、ズレの練習は何となく色々とイメージできても
キレの練習はパッと思い浮かばないケースが殆どです。
なぜなら
スキースクールやキャンプなど、
技術指導を受ける場面の多くが
ズレをベースにした練習を行うから
です。
実際にSKIER`sLABに来ていただいている
サポートメンバーの方でも
キレの練習を正しく行ったことがある人は珍しいです。
この様な話をすると
「いえいえキレの練習もしていますよ!」
「技術選に出るような人が集まるキャンプは
キレ(フルカービング)での滑りばかり行っていますよ!」
といった声もあるかと思いますが、
ここで大きなポイントを忘れている可能性が高いです。
それは
キレ(フルカービング)が出来ない人を
出来るようにする為の練習として行っているか?
という部分です。
多くの場合、キレ (フルカービング)の練習は
もうすでにキレが出来ている人が
さらに高める為に行う練習が殆どです。
そういった練習と、キレがまだ正しく出来ない人が
出来るようになる為の練習はちょっと違います。
そしてもう1つ考えたいのが、
なぜスクールやキャンプといった
指導を受ける際に練習するベースは
ズレの練習なのでしょうか?
あなたは分かりますか?
スキーの基本はズレから?キレから?
なぜスクールやキャンプといった指導を受ける際に、
練習するベースはズレの練習なのか?
多くの場合、シンプルに
「だってズレが基本だから!」
というイメージを持っているかと思います。
まさにその通りで、ズレはスキーの基本であり、
そのズレがきちんと出来てから、
キレ(フルカービング)に入っていくのが
今のスキー界で考えられている上達の道ですよね!
この考え自体は、決して間違えているわけではありません。
ただここで、不思議な点に気づいたでしょうか?
それは
『スキーの基本的な上達の流れとしては
ズレ→キレだからズレの練習をメインで行う』
↕
『今のカービング世代の子達は
キレをベースに上達している』
という2つの考えが矛盾している点です。
では今の子達は基本に反した、ダメな上達の仕方なのか?
と聞かれたらそうは言い切れないですよね?
現にさきほど紹介した、スキーのグラフィックの特集でも
むしろキレがベースの考え方に移行していくのでは?という内容です。
勿論初めてスキー板を履いた人は、誰でもズレのプルークボーゲンからですが、
そこからすぐに今の子供たちの様に、キレベースになっていくのか?
それとも従来通り、ズレベースで練習をしていくのか?
ここに大きな分岐点があらわれます。
そして子供たちは、そんな分岐点なんか知らずに
自然とキレの方に進んでいるという結果も、とても重要です。
そもそも切れているのか?ズレているのか?なんて、
幼稚園や小学校低学年ではよく分かってないと思います(笑)
さてこれまでの基本の流れと、今の時代の子達の上達の流れが違う中で、
どうやってスキー上達の道を進むのか?
ここを考えてみてください!
…
…
とここで終わると
「そりゃそうなんですが、
なんかヒントを下さい!」
と消化不良になると思いますので、
一応SKIER`sLABで行っている練習の方針を、
簡単にお伝えします。
因みにこれが正解だ!というわけではないので
あくまでも一例としてお読みください。
おすすめのスキー上達はズレを使ったキレの練習?
SKIER`sLABでは基本的に
ズレを用いてキレの練習をしていく
という方向性で練習をしています。
要はキレに繋がるズレの練習をしているという事です。
言い方を変えれば、ズレの為のズレの練習はしてないとも言えます。
こういわれてもいまいちピンとこないと思うので、もう少しかみ砕くと、
ズレで練習はしているけど、その練習で行っている動作が
そのままキレに繋がっているといったイメージです。
ですからズレの練習をして、次はキレの練習といった
違うカテゴリーに分けて行うのではなく
ズレの練習の延長線上にキレがある感じですね!
これですと同じ内容を行っている中で
自然とキレも出来るようになっていくので
あまりこれまでのズレの練習との違いが分からないまま
キレ(フルカービング)で滑れるようになるケースが多いです。
しかし、もうすでに色んなところで
ズレの為のズレの練習をしてきていると、
まずはキレの為のズレの練習に、
方向性を変えなければいけないので
ズレとキレで全く違う事を行っている様に感じる人がいます。
最近YouTubeでも「ズレとキレのつながり」
といったワードも出しましたが、
この2つが同じカテゴリーとして
捉えられる滑りをしているのか?
それともズレとキレ全く違う事を行っていると
感じる滑りをしているのか?
この2つでは全然違うので
ぜひあなたはズレとキレに対して
どのような感覚を持っているか一度整理してみてくださいね!