意識しているスキーヤーが少ない!? コブ、整地、新雪、どんな環境でも上手にスキーを滑る為に重要な板との距離感とは? #392

 

 

今回の記事は整地やコブ、新雪など
ありとあらゆる環境を滑るにあたってとても重要でありながら
あまり触れられていない要素について、解説していこうかなと思います。

 

まずはコブで例えると分かりやすいので
コブの指導法や意識を見ていきましょう!

 

コブで重要だけど意識されていないある要素

 

「コブで重要な要素は何ですか?」

 

 

と聞かれたら、あなたは何が思い浮かぶでしょうか?

 

 

SKIER`sLABに寄せられるコブに対する質問の多くは

 

・吸収動作(脚の曲げ伸ばし)

・逆ひねり

・板の回旋

・足首の使い方

・ストックワーク

・トップの先落とし動作

・ライン(通り道)

・ポジションを前にする

 

 

といった要素についてです。
これらは確かにとても重要な要素であり、
スキー界のコブ指導でも頻繁に出てきます。

 

しかし上記の要素を意識しても、
なかなかコブが思うように滑れないスキーヤーの方は非常に多いですよね?

 

 

その理由は上記の要素を行う上で
土台となる要素が抜けているからです。

 

 

では土台となる要素とは何か?
それは


 

 

 

板との距離感

 

 

です!

 

 

コブが上手く滑れない悩みで

 

 

「板との距離が上手くとれないです…」

 

 

といった内容が送られてくる事はまずありません。

また、コブの上達法で

 

 

「板との距離感を正しくとらないと…」

 

 

といったワードもあまり目にしないですよね?
(もちろんそれに近い内容はたくさんありますが)

 

 

ですから、コブの上達には【板との距離感】が大事だよ!
と言われてもいまいちピンと来ないかもしれません。

 

 

そこで今回の記事で、まずは板との距離とは何かを
しっかり整理していってくださいね!

 

スキー板との距離とは具体的にどういった距離なのか?

 

スキー板との距離とは具体的に
どの部分の距離だかわかるでしょうか?

 

「いやそんなこと説明されなくても分かりますよ!」

 

 

と思った場合は注意が必要です!

 

 

なぜなら私がお伝えする『板との距離』というワードを
いまあなた自身がイメージした『板との距離』が同じだと
勝手に思ってしまっているからです。

 

 

勿論本当に同じことを思っているのであれば問題ないのですが、
結構食い違っている事が多いのが、スキー界の用語や技術論です。
(まぁスキー界に限ったことではないですが(笑))

 

 

ですからまずは、『板との距離』とは
具体的にどういう定義で話しているのかを説明しますね!

 

 

この板との距離の説明が長くなり、
コブにどう繋がるかまで時間がかかるかと思いますが
気長に読み進めていって下さい(苦笑)

 

 

まず今回お話しする板との距離の定義ですが、

 

 

“第三者から見た”板とスキーヤーの『横方向の距離』

 

 

です!

 

直立している状態ですと、板が自分の真下にありますよね?

 

その場合、縦方向には脚の長さ分の距離(高さ)がありますが
横方向には距離がない状態です!

その状態からくの字の姿勢になると
身体の中心から板の間に距離が生まれます。

 

 

 

一見当たり前の事をダラダラ話している様に思えるかもしれませんが、
実はこの部分の前提を整理する事はとても重要です。

 

 

 

なぜなら

 

人それぞれ真上に立っている事と
板と距離がある事の解釈が違うから

 

です!!

 

 

ではこちらの画像をご覧ください。

 

 

この画像は板との距離があるでしょうか?

 

 

補助線も書いているので、見たまんまですが
先ほどの定義からすると、上の画像は板との距離がありますよね?

 

 

 

ではこちらの画像はどうでしょうか?

 

 

これですと補助線の通り、板の真上にいるので
距離はありませんよね?

 



ここであなたは気づいたでしょうか?
実はこの2つの画像は“全く同じもの”です。

 

1つ目の画像を傾けて補助線書き換えたものが
2つ目の画像です。

 

冒頭で板との距離感を“第三者から見た”
板とのスキーヤーとの『横方向の距離』
と定義したのを覚えているでしょうか?
実はこの“第三者目から見た”というのがとても重要なんです!

 

 

上記の2つの画像は、第三者目線から見たら
当然板との距離があるのですが、
自分の感覚からすると真下にあると捉えても問題ありません。

 

 

トップ選手の中で、深く傾いてターンしているにも拘わらず

 

 

・常に板真上に立つ

・板を常に足元に置いておく

・板を懐から離さない

 

などといった表現をよくする事があります。

 

 

一見あんなに脚が自分から遠く離れているのになぜ?
と思われますが、上記の内容が分かると、
その人にとっては常に真下にある(板の真上にいる)感覚があっても
おかしくないという事です。

 

 

因みに私もどちらかというと、
“第三者目線”からみたら板を遠くに離していても
“自分感覚”からしたら常に真下にある(板の真上にいる)
というイメージがしっくりきます。

 

少しややこしい話をしましたが、
このあとの内容でお伝えする板との距離は
基本的にそのまま第三者目線でみた
板とスキーヤーとの横方向の距離だと
思っておいてください。

 

 

前提をしっかりとお伝えしたところで
ここからが本題です!

 

 

トップスキーヤーでも大きく異なる板との距離

 

さてここからは板との距離、そしてそれを感じる距離“感“が
滑りにどのような影響を及ぼすのかを解説していきます。

 

まずはこちらの動画をご覧ください。

 

 

 

こちらはアルペン世界選手権女子スラロームで
10位という快挙を成し遂げた、
安藤 麻 選手のフリースキーです。

 

 

この動画の良いところは、その後にアルペンスキー絶対的女王と呼んでもいい
ミカエラ・シフリン選手との比較がある部分です。

 

 

あなたはこの動画をご覧になってどのような感想を持つか?
なんとなくでいいので、頭の片隅に置いといて下さい。

 

 

そしてこの後の内容を読み進めたのちに
もう一度見て、この動画の見え方が変わったのであれば
それは板との距離感という要素の理解度が深まった証拠です。

 

 

さて話を一度戻して、この板との距離ですが、
スキーヤーにとって横方向という事は、
ターン後半の斜滑降に入った際は

 

山側か?

 

谷側か?

 

という話になるのは分かりますか?

 

板は谷側に、スキーヤーは山側に行けば行くほど
距離が出るという事です。

 

 

そして距離があるほど板が傾く、
つまり角付けが強まるというのも
イメージできるでしょうか?

 

 

さてここで質問です。

 

 

あなたはターン後半に

 

 

『山側に行け』

『谷側に行け』

 

どちらを言われてきたでしょうか?
また、指導を受けていないのであれば
どちらの意識を持っているでしょうか?
因みにどちらが正解、不正解はないので気にしないで下さいね!

 

スキー界では一般的に

 

 

 

ターン後半は谷側に行く

 

 

 

と言われています。

 

 

確かにターン後半にスキーヤーが山側に行ってしまうと、
外足が軽くなり内倒してしまいますよね?

 

 

「身体が山側に残っていると指摘されます」

「もっと谷側に身体を落下させてきてと注意されます」

 

といった内容は、私のところにもよく来る悩みの一つです。

 

 

 

でもここで1つ考えて欲しい部分があります。

 

 

先ほどスキーヤーは山側に、そして板が谷側に行けば行くほど
板との距離が出来て角付けが強まるとお伝えしました。

 

ではもしスキーヤーが谷側に寄っていくとどうなると思いますか?

 

これまでの内容からすると板との距離縮まってしまい
角付けが弱まるといった状態になるのが分かるでしょうか?

 

 

この画像は極端な例ですが、
谷側に寄れば寄るほど板との距離がなくなって行き
(赤い矢印がなくなる)
逆に青い矢印分だけはみ出しています。
マイナスの距離といっても良いですね!

 

 

このマイナスの距離になるとデメリットとしては
見ての通り角付けが減るのですが、メリットもあります!

 

 

それは

 

 

外足の荷重感が増える

 

 

という事です。

 

 

当然身体が外足側に寄れば、
外足に身体の重さが乗っていきます。

 

 

この外足の荷重感という、一見プラスに思える感覚が
気づかぬ間にデメリットを生んでいるケースが
意外にも少なくありません。

 

 

外足荷重が強まって角付けが弱まる事が、マイナスに感じない場合は
『外足に乗る』という概念から変えていかなければならないので
まずはこちらの動画をご覧になる事をお勧めします。

 

さて少し長くなりましたが、スキー界は常識となっている

『ターン後半は谷側に!』

という内容にも、デメリットがあるのが
お分かりいただけたでしょうか?

 

 

しかしこの『ターン後半は谷側』のデメリットは
角付けが弱まるだけではありません。

 

 

もっともっと厄介なデメリットが隠されています。

 

 

 

ターン後半に谷側による最大のデメリット

 

 

ここまでを通して勘違いしないで欲しいのが
デメリットがあるとお伝えしただけで
ターン後半に谷側に寄る事が間違いではありませんからね!

 

先ほどもお伝えした様に
荷重が増えるというメリットもありますので、

 

 

谷に寄れば
 荷重が増えるというメリット
 角付けが減るというデメリット

 

 

・山によれば
 角付けが増えるというメリット
 荷重が増えるというデメリット

 

 

このようにメリット、デメリットをしっかり理解して、
どれぐらいだと理想なのか?という板との距離を計る感覚を

 

 

 

板との距離感

 

 

 

と言っているわけです。

 

 

ここまでの内容を理解できただけでも十分素晴らしいのですが、
実をいうとここからが本題です。

 

なぜならこれまでの内容ですと、
板との距離感がなぜ大事か?
という情報の半分だけしか伝えられてないからです。

 

もう少し具体的に言うのであれば

 

 

ターン後半の話しかしていない

 

 

という事です。

 

 

「なるほど!ターン前半の距離感も大事という事ですね!」

 

 

と思われたかもしれませんが、
その考え方も半分正解で半分不正解です。

 

 

本当に伝えたいのは

 

 

ターン後半の距離感
    ||
ターン前半の距離感

 

という考え方です。

 



はい、意味が分からないと思ったかもしれません(笑)
ちゃんと説明していきます!

 

先ほどの話では、ターン後半の距離感が近すぎた場合
ターン後半の荷重は増えるメリットはあるけど
角付けは減るというデメリットがあるとお伝えしました。

 

外足の板に近づけば近づくほど荷重はかかりますが
スネの角度が(角付け)が緩んでいきますよね?

 

 

しかしこの角付けが緩む以外に
もう1つ大きなデメリットがあります!!

 

それが

 

 

次のターン前半の荷重が減る

 

 

という事です。

 

この理由があなたには分かるでしょうか?

 

 

ターン後半に谷側に寄りすぎた状態で切り替えると、
板との距離感がどういう状態で次のターンが始まるかを、
イメージしていただけると分かりやすいかと思います。

 

 

答えは

 

 

『板との距離が遠い状態でターン前半が始まる』

 

 

です!

 

ターン後半に距離が近すぎれば、
次のターン前半は距離が離れる
(ターン前半 角付け:強 荷重:弱)

 

 

この様にターン後半の距離感が実はそのまま
ターン前半に影響をしているという事です。

 

 

ではその逆で、ターン後半に板から離れると
外足荷重がしずらく内倒するというデメリットは
次のターン前半にどのような影響をもたらすでしょうか?

 

 

逆に次のターン前半は距離が近いので
外足荷重がしやすい状態になります!
(ターン前半 角付け;弱 荷重:強)

 

 

もちろんこの理屈が絶対的なものではなく
切り替えのやり方によっては、
ターン後半の距離感のミスをリカバリーもできます。

 

とりあえずここまでで

 

 

ターン後半の距離がターン前半の距離と繋がりがある!

 

 

という考え方が、なんとなく理解できればOKです!

 

 

因みに言われてみればとてもシンプル内容ですが
この内容をきちんと理解して、
スキー上達に繋げているケースは意外と少ないです。

 

 

今回の記事でまずは板の距離感という考え方と、
それがスキーにおいてどのような影響をもたらすかが
理解できていれば大丈夫です!

 

 

では次回の記事で、実際のコブや整地の滑りに
この距離感が影響している部分を解説していきますのでお楽しみに!