スキー技術選の不整地(コブ)は、なぜ小回り種目とは真逆の方向性に進んでいるのか? #391

前回の記事で
現在スキー検定や基礎スキーにおいて求められている小回りの方向性や、
どうしてそうなってきたかという背景をお伝えしました。

 

スキー検定(バッジテスト)に何が起きている?小回り技術の時代の変換期、ズレとキレは別物か? #390

ここ数年にわたり、 スキー検定(バッジテスト)や、全日本技術選手権において ある大きな変化が起きている事に、気づいているでしょうか?     それが   『…

 

 

まぁ簡単に言ってしまえば

 

 

「今時の小回りはフルカービングベースから考えているので、
 昔のひねりを意識した小回りよりターン弧が大きいよね!」

 

 

といった感じです。

 

 

 

これに対して、

 

 

「ひねり系でずっと練習してきたからとても難しい」

 

という意見や

 

「しっかりひねりでコントロールされた小回りより、
 多少暴走気味でもカービングベースの小回りの方が、
 評価されるのは納得できない」

 

といった声まで様々でした。

 

 

詳しくは前回の記事をお読みください!

 

 

 

確かにどちらが良い悪いというよりは技術の選択なので、
片方だけ評価される理由はよく分かりませんが、

 

「今はこれが評価される」

 

というのは事実です。

 

 

 

さてこの小回りに付随して
もう1つお伝えしておきたいテーマがタイトルにもある

 

『コブ(不整地小回り)』

 

です!

 

 

このコブ(不整地小回り)を小回りと比較してみていくと
ある面白いことが見えてきます!

 

 

 

技術選で求められるコブ(不整地小回り)の変化とは?

 

私が不思議だなと思っている点は
技術選や基礎スキーの草大会、スキー検定(バッジテスト)において
このコブと小回りの方向性の違っている点です。

 

 

同じ小回りと言っても
整地での小回りは前回の記事でもお伝えした様に

 

 

ひねり系の小さいターン弧

 

 

カービングベースの大きいターン弧

 

 

という方向性に進んでいますよね?

 

 

 

ではコブ(不整地小回り)はどうでしょうか?

 

 

コブといえば元技術選王者である丸山貴雄選手が有名ですが、
技術選のコブを滑っている動画を年代別にご紹介しますね!

 

 

【2016年 技術選】

 

 

 

【2019年 技術選】

 

 

 

コブの形状もあるので2つほどご紹介しましたが
基本的には速い滑走スピードで、
縦に縦にと滑り降りてきていますよね!

 

 

 

 

10年以上前の全日本技術選のコブは今のスキー界とは真逆の評価?

 

 

 

先ほどは2010年代後半の技術選の滑りをご紹介しましたが、
では10年以上前の2009年技術選はどうでしょうか?

 

 

 

【2009年 技術選】

 

 

 

ちょっと遠い映像ですが違いが分かりますか?

 

 

 

他の選手もそうですがいわゆる『バンクライン』
呼ばれているライン(通り道)で滑っています。

 

 

バンクラインとはコブの淵を滑る滑りで
直接真下に落ちずに遠回りするラインになる為
直線的なラインよりもターン弧が大きくなります。

 

 

上の画像の赤点線ラインが、まさにコブのバンクの部分ですね!

 

 

もしいまいちピンとこない場合は
競輪のバンクをイメージすると分かりやすいかと思います。

 

 

 

丸山貴雄選手の『バンクマジック』というワードも流行っていましたね。
(というより基礎をやっているスキー仲間がよく言っていました)w

 

 

 

先ほどお伝えした様にバンクを滑るとターン弧が大きくなるが
2016、19年の滑りと2009年の滑りを
比較することで見えてくるでしょうか?

 

 

 

コブは昔に比べてターン弧を描く大きな滑りから、
ターン弧が小さい縦にくるモーグルの様な滑りの方向性に
進んでいるという事です!

 

 

 

つまり弧が大きくなっている今の小回りとは
逆の方向性に進んでいるのが分かったでしょうか?

 

 

 

因みにモーグル選手が技術選の前走で滑る
貴重な映像も見つけましたのでご紹介します!

 

 

【2015 前走 モーグル西選手】

 

 

 

先ほどもお伝えしましたが

 

 

「コブの形状が違うから滑りも違うのでは?」

 

 

というご意見もあるかと思いますが、
もしそうだとしても、そもそもなぜコブを作る際に形状が
バンク滑りがしやすいコブと、縦に行きやすいコブに変わったのか?
という疑問が出てきます。

 

 

因みにこれも本来はどちらが良い悪いというものではありません。

 

 

実際、私がクラウンを受けた時は、

 

 

「上はバンクで下は縦ラインといった感じで
    2つの滑りを見せると加点が出るよ!」

 

 

と事前講習で言われて、
コブの途中からラインを切り替えて滑った記憶があります。

 

 

 

技術選に至ってはやはり速く縦に滑る事がメインで
無理なところは少し弧を大きめにといった感じですね!

 

 

 

もし整地小回りと同じ技術の方向性が求められるとしたら
コブ(不整地小回り)もカービング要素の強いターン弧の大きな
バンクラインの方が評価されそうですが実際は真逆になっています。

 

 

 

ではなぜ小回りは弧が大きくなる方向性で
コブ(不整地小回り)の弧が小さくなる方向性といった
真逆の道に進んでいるのでしょうか?

 

 

 

技術選でも検定でも基礎スキーに求められている共通しているのものとは?

 

これまでの内容を通して
同じ小回りでも、整地の小回りと、不整地(コブ)小回りでは
真逆の方向性に進んでいるのが、見えてきたかと思います。

 

 

 

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《整地小回り》

ひねり系(ターン弧:小)

カービングベース(ターン弧:大)

 

 

 

《不整地小回り》

 

バンクライン(ターン弧:大)

縦ライン(ターン弧:小)

 

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しかし、実は一見真逆に見える方向性も
ある点が理解できると、同じ方向性とも言えるんです。

 

 

 

そのある点とは近年の技術選や検定の採点や
板の開発にまで大きく影響している要素です。

 

 

それが

 

 

 

【滑走スピード】

 

 

 

です!

 

 

 

 

この滑走スピードの速さこそ、
近年非常に重要視されている要素の1つです。

 

 

 

この滑走スピードという点で小回りと不整地小回り(コブ)を
見ていくとまた違った見え方になります。

 

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《小回り》

 

ひねり系
(ズレが大きいので滑走スピードが上がりづらい)

 

 

カービングベース
(ズレが少ないので滑走スピードが上がりやすい)

 

 

 

《不整地小回り》

 

バンクライン
(ラインが遠回りする為滑走スピードが上がりづらい)

 

 

縦ライン
(直線的に落ちてくるため滑走スピードが上がりやすい)

 

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といった感じです。

 

 

因みに少しややこしいのが、滑走スピードに関係する要素を
『ズレ』『ライン』という2つの観点で見ている点です。

 

 

 

ズラシて滑るのと、フルカービングで滑るのとでは
後者の方が滑走スピードが速いのは分かりますよね?

 

 

そしてターンするより直線的に滑った方が
スピードが速いのも当然です。

 

 

 

ただ直線的に滑れば絶対速いかというと、
横滑りでズルズル滑ってきたり、
コブでもズルドンラインで降りてくると
(ラインは直線だけどズレが多い)
滑走スピードは上がりません。

 

 

 

究極的に速いのはズレがない直線ライン
つまり直滑降ですが、それではターンではないですね(笑)

 

 

 

この様にズレとラインのバランスで
速い滑走スピードの中でターンをしてくる事が
求められているわけです。

 

 

 

ですから板の開発の方向性も、少しずつ変わってきています。

 

 

 

昔は

 

・アルペンスキー用は重くて硬い

・デモ(基礎スキー)用は軽くて柔らかい

 

といったイメージで、
技術選トップ選手はアルペンスキーの板で
出場している選手が殆どでした。

 

 

しかし最近では基礎用であっても全日本技術選に合わせた
『技術選モデル』というのも登場するなど、
デモ用のトップモデルは重くて硬めに作られるようになり
トップ選手もこのモデルを履いているケースが殆どです。

(技術戦モデルを出してないメーカー所属の選手は別ですが)

 

 

他にもプレートだけ硬くて重いものに変えて
滑走スピードを上げるなどもありますね。

 

 

 

上記の流れで板の選択肢が広がり嬉しい反面、
一般スキーヤーにおいては、
板のチョイスが少し難しくなったのも確かですが(苦笑)

 

 

この様な感じで『滑走スピードを速くする』という観点から見れば、
どちらの種目も同じ方向性に進んでいるという事が
お分かりいただけたでしょうか?

 

 

 

勿論それに伴って,低速で良いポジションで滑っているより
ポジションにエラーがあっても、スピードが出ていれば
ある程度評価されてしまうというデメリットもあるので、
一概に良い方向に向かっているとは言えないですが、
これから検定や技術選を目指す場合は頭に入れておくと良いと思います!