なぜ腰高のポジションは浸透しないのか? 220

腰高のポジションシリーズ第3弾です。

 

 

これまで腰高のポジションとはなにか?

腰高のポジションをとるメリットは?

 

 

といった疑問について書いてきました。

 

 

腰高のポジションのメリットを考えれば

どんどん推奨されてもおかしくないのですが

なかなか日本のスキー指導には

反映されてきません。

 

 

それはなぜなのか?

 

 

まずそれを知るためには

腰高のポジションのデメリットについて

考えてみましょう。

 

 

 

 

デメリット①

上体が上に抜けやすい

 

 

はじめにお伝えしておきます。

 

腰高のポジションになるのと

上体が上に抜けるのとでは

似ているようで違います。

 

 

ただ腰高のポジションに戻ろうと

上に行くことを意識するあまり

行き過ぎてしまって、

上体が上に抜けてしまうことが

よくあります。

 

 

上体が上に抜けてまうと

板がたわんで開放した時の力が

進行方向に向かわず抜けてしまうので

あまり状態が上に抜けることは

良しとされていません。

 

 

 

 

 

デメリット2

切り替えが遅くなる

 

 

腰高のポジションとは基本的に

切り替えの時のポジションを意味しています。

 

切り替えの時に

腰高のポジションになることによって

脚が長い状態でターンには入れたり、

上から下方向への力を板に伝えられます。

 

 

ただ一方で、切り替えとは

フォールライン方向(斜面の下側)

身体を落とすことでもあります。

 

 その際腰高のポジションをとるということは

一旦重心位置を高い位置まで上げて

そこからフォールライン方向に落とすため

移動に時間がかかります。

 

 

一方低い姿勢ですと

そのまま次のフォールライン方向に

重心を最短距離で移動できるため

速い切り替えが可能になります。

 

切り替えが遅れるということは

その後の後継ポジションにもつながってくるということです。

 

 

 

 

デメリット3

内倒になりやすい

 

 

内倒になる原因は様々ですが、

この場合は外脚にうまく乗ることができずに

内倒するパターンがほとんどです。

 

 

腰高のポジションにするとは

腰の位置と板の位置が

離れることを意味にします。

 

 

しっかり外脚に乗る運動がされなければ

板と腰の位置が離れているので

そのまま内側に傾き内倒となってしまいます。

 

あまり低い姿勢で内倒するスキーヤーの方は

見たことがないはずです。

 

 

だいたいが外脚はながく伸びているんだけど

意識が内側に行ってしまい

内倒となっているケースです。

 

 

さてこの3つが

腰高のポジションを意識すると

起きやすい代表的なデメリットです。

 

 

動作にはメリットデメリットがありますので

それは仕方がないことです。

 

 

それでも

腰高のポジションをとることの

メリットの方が圧倒的に重要で、

スキーの基本です。

 

 

野球を例に例えると

 

 

ピッチャーの基本であるストレートは

軌道がまっすぐで分かりやすいから

練習するな!

 

 

とは絶対にならないはずです。

 

 

しかしスキー界ではこれと同じことが

現実で起きています。

 

 

それはなぜか?

 

 

次は腰高のポジションが

あまり指導や一般スキーヤーに

反映されない原因について考えていきます。

 

 

 

 

原因1

目の前の結果が重要だから

 

 

以前ブログやメルマガで

似たような内容をお伝えしましたが、

基本的に線で考えずに、点で考える

指導がほとんどです。

 

 

線で考えるとは、

ある目的に向かって順序立てて

指導を組み立てるということです。

 

 

一方点で考えるとは、その場の結果しか

見えていないということです。

 

 

これを腰高のポジションを例に考えてみます。

 

 

線で考えていれば、

腰高のポジションをとる

メリットの重要性を考えて、

上体が上に抜けるなどのデメリットが出ても

 

 

『今は上に抜けちゃっても大丈夫です!

それよりも今後足を長く使えたり、

板に対して上から下方向へ

しっかり力を伝えることが重要だから

まずはしっかり腰高のポジションを

身につけましょう!』

 

 

となります。

 

 

しかし点でしか考えられていない場合は

目の前の

『上体が上に抜けている』

というデメリットしか目に入らないため

 

 

『もっと姿勢を低くして

上体が上に抜けないように!』

 

 

と指導が入ります。

 

 

 

一見その場では

点の指導の方が上手くなったように感じます。

 

 

しかし将来を考えたときに

どうでしょうか?

 

 

本当に目指す目的の場所へたどり着けなければ

いみがありません。

 

 

 

原因2

トップ選手の滑りがお手本だから

 

 

どのスポーツもそうだと思いますが、

トップ選手の動作を参考にして

自分の練習を行うことは

一般的に行われています。

 

 

しかしその一方で、その練習方法には

大きな落とし穴があることに

気づけていません。

 

スキーの場合トップ選手の滑りをみると

腰高のポジションをとらずに

滑っているように思えるシーンが

よくあります。

 

 

しかしそれにはきちんとした理由があり、

その理由を把握しないまま、

形だけ真似してしまうので

腰高のポジションが浸透しません。

 

 

【アルペンの場合】

 

アルペンスキーの場合

ワールドカップ選手の滑りを見ていると

腰が低いポジションで滑っている選手が

多くいます。

 

 

それをみて腰を低くする意識を持たれますが、

そこが大きな勘違いです。

 

 

基本的にワールドカップ選手が

フルアタックをかけている場合

ギリギリの滑りをしているので

リカバリーに近い動作がよく出ます。

 

タイミングが遅れたので、

低い姿勢のまま次のターンに入らなければ!

 

 

といった感じです。

 

要はミスをリカバリーする動作を

真似しているということに

気づいてください。

 

それはテクニックの一つであって

基本ではありません。

 

 

ワールドカップ選手の

フリースキーの動画を見る機会は

少ないと思いますが、

練習ではきちんと

腰高のポジションの練習をしています。

 

参考までにミカエラシフリン選手の

若かりし頃の(いまでも十分若いですが)

動画を載せておきますので

参考にしてください。

 

 

 

 

【基礎スキーの場合】

 

 

基礎スキーの場合は

技術選の選手の滑りを参考にしている方が

殆どだと思います。

 

 

低い腰のポジションから滑るシルエットは

この日本独特の文化である

技術選から来ているといっても

いいかもしれません。

 

 

しかしあなたが滑るシチュエーションと

トップ選手が技術選で滑っている

シチュエーションとではかなり違うことを

お気づきでしょうか?

 

 

技術選の選手たちは急斜面を

ハイスピードで滑走しています。

 

 

そのため腰が低い状態のまま切り返さないと

次のターンに遅れてしまうリスクがあります。

 

 

2月号のスキージャーナルで

昨年技術選6位の佐藤栄一選手も

いっていましたが、

結果として低い姿勢になっているだけで

そこが目的ではありません。

 

 

そこを勘違いして低い姿勢になることを

目的としてしまっている

基礎スキーヤーの方が非常に多いです。

 

 

 

かなり長くなってしまったので

今回はここまでにしておきます。

 

 

本当はまだまだお伝えしたいことがありますが

それはまたの機会にします。

 

 

すこしでも腰高のポジションの重要性と

マスターするための取り組み方が

伝わるといいのですが。