『スキーでは内腰を引く外腰を出す』の呪いから解放されるためには板の軌道の誤解を解くしかない!! 381
前回までの記事で、実際の選手の滑りは内腰が前で外腰が後ろにある事や
外腰が後ろにあるなことを指摘されているなら、
なぜ外腰が後ろにある事で得られるメリットを受け取れていないのか?
といった内容をお伝えしました。
まだ前回の記事をご覧になっていない場合は
まずはこちらをご覧になってくださいね!
多くのスキーヤーが誤解しているスキー板の軌道と前後差の関係性 380
前回の記事で、あくまでも事実ベースでは 『外脚は引けて行き内脚は前に出ている』事に対して、 真逆の現象(外脚(外腰)前、内脚(内腰)うしろ)に 本当にならなけれ…
さて今回の記事でスキー界で常識となってしまっている
『外腰を前に出して内腰を引く』という
事実ベースとは異なる指導の原因を一旦まとめていきます!
結論から言ってしまうと、
『外腰を前に出して内腰を引く』が常識となってしまった原因は
その理論の裏付けとなっている
板の軌道の誤解
です!
つまり外腰、内腰を語る前に、この板の軌道の誤解を解くことの方が先決となります!
根本的に間違っている板の軌道のイメージ
スキー界でよく考えられている板の軌道は、根本的に間違っているのですが、
そうは言ってもなにがどう間違っているのか、
意味がわからないと思うので解説していきます。
一般的によく言われている
外足と内足には軌道差があるから外足は遅れて内足は前に出ていく
という考えにはある前提条件が必要になります。
それが
両者とも同じスピードで
並行した弧を描く
という前提条件です。
当たり前ですが陸上トラックでも、同じ位置からスタートすれば
インコースの人が先にゴールできるのはアウトコースの人と同じスピードで走っている
というのが前提です。
インコースでも足が遅ければ遠回りのアウトコースにも抜かれてしまいます!
ではスキーはどうでしょうか?
外足と内足どちらも同じ状態で滑っているでしょうか?
…
…
…
答えはNOです!
実は外足と内足は違う状態でターンをしています。
パッとイメージできるのは荷重差ですが、これは目に見えるものではないので
今回は両脚荷重としておいてもっとわかりやすい部分をお伝えします。
それが
角付け量
です!
アルペン、基礎スキー関係なくトップ選手たちの角付け量がわかる画像を並べました。
さて角付け量の違いがわかるでしょうか?
地面スレスレのテッドリゲティ選手ですら、若干角付け量に違いがありますね!
スキーでは外足、内足の両すねを平行にするという嘘
先ほどの角付け量の違いを見ると分かるように
実は【両スネを平行に使う】という常識も間違っていることが分かります。
もちろんそういう“意識”でしたら問題ないのですが、
“事実ベース”では先ほど見ていただいたように、外足の方が角付けは強いです!
でも不思議な事に、一目見れば分かる事実でも
多くのスキーヤーにとっては
「トップ選手は両スネがそろっている」
というように見えてしまいます。
まさに
【人間はその情報を見たいように見てしまう】
という良い例ですね!
さてここからが本題です。
外足の角付けが強いと、内足とどのような差が生まれるでしょうか?
一番大きいな違いは
【たわみの量】
です!
角付けとは言い換えると
板の裏側に空間を作る行為
とも言えます。
角付けがない場合は板の裏側の空間はゼロですよね!
この空間が大きいほどたわませられる量も増えていきます。
その点を注目して下記の画像をご覧ください。
アルペンスキー女王ミカエラ・シフリン選手の
外足の板は明らかに内足よりたわんでいますよね?
丸山貴雄選手の上空からの画像も
ターンの後半に外足の板の方がたわみ
切れ込んでくるのがよくわかります。
もちろん内足より外足の方が遠回りをして
長い距離を滑走しているのは事実です。
しかし本当に一般的に言われているような
軌道差による遅れが生み出される
【外足と内足が同じ速度で平行して回る状況】
という前提は成り立っているでしょうか?
角付けとたわみが変えるスキー板の軌道
ここでもう一つ気づいてほしい内容があります!
それは角付けの違いが板のたわみの違いを生み
板のたわみの違いは板の軌道を変えるという事です!
よくトップ選手達は
【深くて切れるターン】
という表現がされるように、角付け量の多さによって軌道を深くすることができます。
よく言われている【つの字ターン】もまさにこの現象です。
さてこのことから見えてくるのが
本当に内足と外足って陸上トラックの様な
平行の軌道を通っているの?
という部分です。
実際の軌道を図に表すとこんな感じになります!
いろんな前提が覆ってきて、頭が混乱しているかもしれませんが、
・外足と内足は角付け量が違う
・それによってたわみが違う
・たわみが違えば板の軌道は違う
という部分は紛れもなく実際に起きている事実なので、ぜひ整理しておいてください。
軌道が違うのになぜ外足のスキーは遅れないのか?
先ほどもお伝えしたように、外足と内足線路のような平行ラインを通っていると
一般的には思われがちですが、実際は外足の方が角付け量があることから板がたわみ、
内足より【つの字】気味にターンをしています。
ただこれですと、平行ラインを通る以上に外足は大回りになるので、
より外足(外腰)を前に出し、より内足(内腰)を引く事が重要となるのでは?と思うはずです。
確かに外足と内足が同じスピードで上記の軌道を描けば、
確実に外(外腰)は遅れて内足(内腰)は先行します。
「だから何度もそういってるじゃないですか!」
と思われたかもしれません。
もちろん理屈はその通りです。
“同じスピード”で進むのならば
…
…
…
さてあなたは何がポイントか見えてきたでしょうか?
なぜここまではわざわざと外足が遠回りしている事には変わらないのに、
外足と内足の角付け量や軌道など確認してもらったのか?
それは
角付け量と板のたわみが違う
外足と内足は本当に同じスピード進むのか?
という点を考えるうえで必要だったからです。
冒頭で触れましたが、軌道差によって外足(外腰)が遅れて内足(内腰)が先行するのは、
両者が同じスピードで進んでいることが前提の1つです。
両者が同じスピードで進んでいるなら
当然遠回りしている外足(外腰)は遅れをとるから前方へ出す事で速度を上げて、
内足(内腰)は引く事によって速度を下げて釣り合いをとりたい
といったイメージですよね?
ではたわみが違う板はそもそも根本的に同じスピードで進むのでしょうか?
板がたわむというのは、先ほどお伝えした板の軌道が深くなるだけではなく
もう1つ重要な効果があります。
それが
…
…
…
解放したときに走る!
という事です!
簡単に言ってしまうと、『加速する』という事ですね!
ですからトップ選手の滑りは左右にワープするように
ピュンッ、ピュンッと板が加速しているように見えます。
さてここで気づいて欲しいのが、外足(外腰)が遅れないように前に出す(内足よりスピードを上げる)という動作を行う際に、2つの方法があることが分かります。
<1>自らの動作(筋力)で外足(外腰)を前に出す
<2>板がたわんで解放されることで外足(外腰)が前に出てくる
“出す”のか?
“出てくる”のか?
自分の仕事なのか?
板の仕事なのか?
分かりやすい例でいうなら
さきほど紹介したこちらの丸山貴雄選手の上空からの画像をみて
<1>【軌道差】によってひとつ前のターン後半時は遅れていた左外足(外腰)が
左内足(内腰)になることで先行して行き、
逆に右内足の時は前方にいたのに右外足に切り替わったら遅れていっているな
と感じるのか
<2>左外足のターン後半にたわんできた板を解放することで板が走り、
切り替えから次のターン前半にかけて左足が右足を追い抜いて行っているな
と感じるのかの違いといった感じですね。
<2>のイメージが見えてくると
以前紹介した高瀬選手の
『ターン後半で外足(次の内足)が前に出て行き
次のターン前半はそのまま内足(前の外足)を先行して行く』
という表現も分からなくもないですよね?
さてあなたは<1><2>どちらの様に見えるでしょうか?
ここまでを通して外腰、内腰の前後差を、板の軌道で考えていたが、
実際は板の軌道意外にポイントがある事をお伝えしました!
ここまでが分かると一番重要である
「外足(外腰)を前に出して」と言われるのはどういう状態のスキーヤーなのか?
という部分が見えてきます!
それは外足の板がたわんで走らない為
ドンドン内足が先行していってしまう状態です!
結果的には内腰(内足が)先行していて外腰(外足)が遅れているわけですが
それはあくまでも結果論であり安易に逆の状態にすれば、解決するわけではありません!
外腰を前に出してと言われるスキーヤーが直すべき本当の原因は
外足がきちんとたわんで走る環境を作る事
という何ともシンプルな答えです!
この部分ができていれば、トップスキーヤーたちの様に
外足が後ろ、内足が前でもえらが出る事はありません!
逆にこの部分が出来ていなければ、何をやってもエラーが出るというわけですね!
よくSKIER`sLABでは、雨漏りが原因で床が濡れているのに
床を拭くことに事に一生懸命になっていて
雨漏りを直すことをしていないという例えを出しますが、
今回のテーマである、外腰が遅れて内腰が先行しているので
シェーレンなどのエラーが出ているのも同じです!
ただその部分を修正しても、対処療法にしかならないので
何が本質なのかは見落とさないように気をつけてくださいね!