多くのスキーヤーが誤解しているスキー板の軌道と前後差の関係性 380
前回の記事で、あくまでも事実ベースでは
『外脚は引けて行き内脚は前に出ている』事に対して、
真逆の現象(外脚(外腰)前、内脚(内腰)うしろ)に
本当にならなければいけないと思い込んでいませんか?
といった内容をお伝えしました。
まだ読まれてない場合はこちらをご覧ください!
それって本当!?スキー指導やスキー検定でよく言われる外腰を前に出す事の真実 379
今回の内容はスキー指導の定番となっている 『外腰、外足を前に出していく』 について解説していきます! なぜこのテーマをお伝えしようと思ったの…
丸山選手の上空からの画像は非常にわかりやすいですが、
実はターンの初め外脚(外板)が一番前に出ているのが
ターン前半でその後徐々に引けていっているんですよね。
この事実を知らないまま、外脚(外腰)は前に出て内脚(内腰)を引けた“状態”で、
前後差はついてはいけないという意識の元
一生懸命練習しているスキーヤーは数えきれないほどいます。
そうならない為にも、まずは“感覚”はどうであれ
“現象”という事実ベースでは、
外脚の方が後ろで内脚の方が前にある
というのを、視覚的に確認して欲しいというのが
前回の記事の狙いです。
しかし、事実ベースが分かったところで、
『なぜスキー界では真逆の事が常識になっているのか?』
『なぜプルークでそのような練習をさせられるのか?』
この部分が解決しないと気持ち悪いですよね!
実はたくさんの理由があり、
それらをすべて解説していくと恐ろしいことになるので
今回はメルマガで配信した時に戴いたメールの中で
意見が多かった部分を深堀していきますね!
目次
スキー界では本当に『外腰が前、内腰が後ろ』しか言われていないのか?
前回の記事に引き続き、整理しておきたいもう一つの前提をご紹介します。
それが
スキー界全体がターン前半に外脚(外腰)を前に出し、
内脚(内腰)を引くと言っているのか?
という部分です。
もし全員がそう言っているのだとしたら、
事実ベースでは逆だけど感覚ベースになると
外脚(外腰)前、内脚(内腰)後ろは正しい可能性が出てきますよね?
しかし実際はスキー界全体が皆一様に
外腰(外脚)を前に出して内腰(内脚)を引くように
言っているわけではありません!
例えば以前ご紹介したスキーグラフィックに載っている
高瀬選手のコメントには
『内脚を前に出して外脚を引く』
意識が書かれています。
ちょっと記事の言葉がややこしいですが
ひとつ前のターン後半から切りかえにかけて
外腰(次のターンの内腰)を出していき
そのまま次のターン前半ではその内腰(前のターンの外腰)を先行させていく
といった感じで、
ターン前半に外腰を出していくとは真逆の内容ですね!
こちらの方が実際に起こっている現象とは一致はします!
このことから分かるのが、自ら内脚(内腰)を送り出す意識でも
技術戦で大回り種目別1位をとれてしまうという事です。
(高瀬選手は2019年大回り1位でしたね)
ただターン前半に外腰を前に出していく
“イメージ” ”感覚”は絶対的な間違いではないので
そこら辺は誤解しないように気を付けてください。
大事なのは同じ動作をしているのに
高瀬選手のように真逆の意識を言っている人がいる
というのが実はとても重要なポイントなんです。
なぜスキーは真逆の感覚をいうケースが存在するのか?
さてこうなってくると、いよいよなんだかわからなくなってきますよね!
なぜ事実ベースと逆のことが指導では常識となっているのか?
またアンケートをとると、事実ベースと逆の意見も出てくるのか?
いただいたメールで最も多かったご意見から考えていきたいと思います。
一番多かった内容、それはずばり
・・・
・・・
・・・
通る軌道
です!
【内輪差】
という表現も多かったですね!
因みにあなたは内輪差とは何かわかりますか?
車を運転する人なら免許取得の時に必ず触れるので分かるかと思いますが、
分からない方はこちらの動画をご覧ください!
話を戻して、多くの意見を簡単にまとめると
インコースを通る内脚側の方が
距離が短いから内脚が前に出ていく
アウトコースを通る外脚の方が、
距離が長いから外脚が遅れていく
だからこそ事実ベースとは逆の
外脚(外腰)を前、内脚(内腰)を後ろに引く
“意識”が大事なんだ!その意識がないとどんどん離れてしまう!
というものです。
確かに上記の理由を聞けば、理にかなっているように思えます。
何度もしつこいですが、その意識で理想的なターンが
描けているんであればOKですからね!
この先は、確かにそう思ってやっているんだけど
なぜかトップ選手のような切れのあるターンが
描けないんだよなぁ・・・という人のための話です。
あなたはスキーをしていて前後開脚していきますか?
上記に書いたように、内足と外足の通る軌道に違いがあるから、
事実ベースとは逆の意識が必要という意見を持つ人に、まず考えてほしいことがあります。
それは
「ターン中に前後にどんどん開脚していきますか?」
という内容です。
当たり前ですが“自分を基準点として”
内脚(内腰)がどんどん前にいき、外脚(外腰)がどんどん後ろに下がるのであれば
前後開脚していく状態になります。
しかし実際のイメージはどうでしょうか?
自分が中心に前後に開くのではなく
外脚か内脚どちらかを基準にもう片方が動いていると感じることが多いはずです。
自分が外脚基準にいるなら、内脚(内腰)がどんどん先行していってしまう
自分が内脚基準にいるなら、外脚(外腰)どんどん遅れていってしまう
といった感じですね。
ちょっと文章だとややこしいですが、
【自分】【外脚】【内脚】の3人で陸上トラックをレースしているのか
【自分】は【外脚】か【内脚】どちらかに一体化して2人でレースしているのか?
といった感じでしょうか?
(余計わからないですかね?(笑))
とりあえず
【1】自分はその場にいて内脚が先行して
外脚が後ろに遅れていく前後開脚状態
【2】自分は外脚と共にいて、内脚が前に出ていく状態
【3】自分は内脚と共にいて外脚が遅れていく状態
滑っている時に、この3パターンのどれに近いか考えてみてください。
外足が遅れていくならなぜスキーにおけるメリットを受け取れていないのか?
先ほどお伝えした【通る軌道】に差があるから
インコースの内脚は前に行く、アウトコースの外脚は遅れる
上記の理屈がそのまま当てはまるなら
【1】自分はその場にいて内脚が先行して
外脚が後ろに遅れていく前後開脚状態
になるのが自然ですよね!
しかし実際の現象は違うはずです!
何人かの方からメールをいただきましたが、
上達に悩むスキーヤーは、
【3】自分は内脚と共にいて外脚が遅れていく状態
のケースが多いです。
「外脚(外腰)にしっかりのれてはいるけど
内脚が先行しちゃって悩んでいる」
とはあまり聞かないですよね。
(そういう人もいるかと思いますが)
多くの場合
「外脚(外腰)にうまく乗れず
外足がターンに付いてこないで遅れていく、ズレ落ちてしまう」
というのが悩みなはずです。まさにシェーレンはこれですよね!
だからこそ一生懸命外脚(外腰)を前に出していくのだと思うのですが、
ここで1つ不思議な点に気づけるでしょうか?
それは
なぜ外脚(外腰)が後ろにあるメリットを受け取れないのですか?
ということです。
外足(外腰)が後ろにある事のスキーにおける2つのメリット
あなたは外脚(外腰)が後ろにあるメリットと聞いて
どんなことだかわかりますか?
代表的な例として2つあるのですが
1つ目は
①スネの角度
です。
試しに今その場に立っていてスキーの基本ポジションをとります。
そこからどちらの足でもいいので少し後ろに下げてみてください。
さてスネの角度はどうなったでしょうか?
当たり前ですが前傾したかと思います。
これは
・お尻が落ちる
・後傾ポジションになる
・足首の緊張感が緩む
といった悩みを持つ人たちが改善するために日頃意識している
足首が入りスネが前傾している状態ですよね?
自分よりも足が後ろにある状態で
お尻が落ちたり、足首が緩んだりするのはまず無理なはずです!
(ブーツを履いて行うとより分かります)
またスネが前傾するということはイコールで
板のトップをかませる動作になります。
(ここ話し出すと長くなるので割愛します)
つまり外脚(外腰)を前に出すことでトップを噛ませるという意識の人もいますが、
現象としては引いたほうがトップは下がるのが分かるかと思います。
ドルフィンターンなんかまさにそうですよね!
脚を前に出すのではなくひきつけるからトップが落ちるわけです!
ここら辺については以前のこちらの記事が分かりやすいです!
後傾スキーヤーが混乱している【外足を前に出す事】と【アンクルポジション】の関係性とは?364
あなたはスキー技術論で 【外脚を前に出していく】 というワードを 聞いたことがありますか? & [&hell…
メリットの2つ目は
②外向傾
です。
何度も技術選チャンピオンの武田竜選手と吉岡大輔選手の対談動画をご紹介していますが、
本当に正しくターン後半の外向傾姿勢をとれないスキーヤーが多いです。
外向傾姿勢をとる場合、外腰はどうなるでしょうか?
上半身で行うエラー動作の外向傾ですと話が変わってきますが
正しくできれば外腰が引けて、内腰が前に出るはずです。
もうなくなってしまいましたが、
スキー検定1級で求められる姿勢もこの状態でしたよね?
つまり外腰が引けるというのは、
外向傾姿勢をとるにあたってメリットになりますよね?
もちろんこれまでの話は
・足首が入りすぎて、
トップがかみ過ぎてしまう
・ポジションが前すぎると
いつも注意される
・外向傾姿勢を強くとりすぎてしまう
といった悩みを持つ方にとってはデメリットなので
まさに外脚(外腰)を前に出さなければいけないのですが
一般スキーヤーでこの悩みに直面している人はほぼいません。
さてこのように
「外脚(外腰)が遅れていってしまうから…」
というのであれば、上記の理屈からすると
「やったぁ!最高じゃん!」
となるはずなのですが、そうはならないのは重々承知しています。
ですから考えてぜひ欲しいんです。
理論上は外脚(外腰)が後ろに下がるとこのようなメリットがあるにもかかわらず、
なぜその恩恵を受け取れないのか?
逆のイメージも大事です!
足首が緩んでお尻が落ちている、外向傾が正しくとれていないという場合は
それって前に出す意識なんかしなくても、すでに外足(外腰)が前に出ていませんか?
といった部分ですね。
外脚(外腰)が下がれば下がるほど足首が前傾して
外向傾は強くなるという理屈も入れて、
冒頭の軌道の差を考えると、また違ったとらえ方ができるはずです。
では長くなってきてしまったので
次回で外腰を前に出す、内腰を引くのテーマをまとめていきたいと思います!