だから事実と違ってしまう?スキーでターン始動における板のグリップとは何か? #383
前回の記事で、技術選トップ選手である
栗山未来選手のある動画を紹介しました!
その動画とは、栗山選手がご自身のターンを解説している部分で
内足が浮いているにもかかわらず、
「ターンの導入は内足のアウトエッジで行っている」
という解説をしているものです。
今回ご紹介している動画の様に
事実ベースとは違う情報を見たときに、
【1】
「いやいや内足浮いているじゃないか!嘘つきだ!」
と感じる否定派
【2】
「えっ?なんで内足が浮いているのに
ターンの始動は内足だと言っているのだろう?」
と感じる疑問派
【3】
「うんうん、内足浮いているけど内足始動ですよね!」
と感じる肯定派
の3つに分かれると
最後にお伝えしました。
まだ前回の記事をご覧になっていない場合は
こちらからお読みになって今回の記事に戻ってきてください!
トップ選手は嘘つきなのか!?スキーのターン前半のきっかけは 内足アウトエッジか? それとも外足インエッジか? #382
今回の記事は、スキーにおける ターン前半のきっかけ について解説していこうと思います! ターンが始まるきっかけをどのよう…
今回は
【2】疑問派
↓
【3】肯定派
の段階を進むための最大の壁についてです。
目次
そのスキー技術論は意識?事実?
「なぜこんなことを言うのだろう?」
と否定ではなく疑問まで行けても
「なるほど!このことをこう表現しているのね!」
となるのは正直言って非常に難しいです。
なぜなら、
技術要素の定義が見えないと分からない
という壁があるからです。
例えば今回参考にさせていただいている、
栗山選手の動画で考えていきます。
なぜ事実ベースでは内足を浮かせて
外足のインエッジが先に噛んでいるのに
『ターン始動は内足のアウトエッジを先に噛ませて
外足のインエッジが後という順番』
と言っている内容を肯定できるのか?
まずこれはどんなスキー情報においても
必ず行ってほしいのですが
_______________
この情報は
【意識】か?
(本人が思っている事、感じる事)
【事実】か?
(物理現象として事実ベースで起きている事)
2つのカテゴリーに分ける
_______________
という事です。
もし
『ターン始動のきっかけは
内足のアウトエッジを噛ませる事が先で
その後に外足のインエッジが噛む』
という情報が、本当に行っている【事実】だった場合、
内足だけパカッと開くガニ股になるか、
外足が浮いてターンに入るといった状態になります。
しかしそのような動作を
ベースに滑っているトップ選手はいません。
(リカバリーや特殊な環境下ではありますが)
そうなるとこの情報は【意識】のカテゴリーに入ります。
現に栗山選手の動画の冒頭をもう一度ご覧ください。
『私の意識や感覚のみをお伝えしますので』
と動画の最初にきちんと前置きされていますよね?
この前置きがある以上、どんな内容を話しても間違いではないんです。
極端な話、
「板は傾けないでまっすぐ立っているだけです」
「板には一切力を加えていません」
と言ったって嘘ではないという事です。
つまり今回色々と言ってきていますが
全員が本当に動画の情報をそのまま受け取れることができれば
否定派なんて一人もいないはずです。
「いやいや確かに感覚とは言っていますが
さすがにそれは言い訳が苦しくないですか?」
と思うかもしれません。
その気持ちも良く分かります!
私も学生時代、
「切り替えが遅い!もうポールの横で切り替えろ!」
と言われ、本当にポールの横で切り替えて
次のポールと逆方向に移動したら
「そういう事じゃない!!意識の話だ!!」
って怒られましたから(笑)
でも今回の情報はきちんと前置きがありますし、
実際は私の例の様に前置きすらなく
意識と事実が混同している情報の方が多いくらいなので、
それはもう情報の受け手側で判断するしかないところです。
このように意識か事実かを
判断するだけでも少し全体像が見えてきます。
ただそれでもまだ
「なぜ事実と違う意識を言うのか?」
という本質的な部分は解決されないですよね。
その背景にはどのような定義で、その言葉を使っているかという
前提の部分にヒントがあります!
スキー板がグリップするとはどういうことか?
まず最も分かりやすいのが
【グリップの順番】
です。
解説ではグリップの順番は
【1】内足アウトエッジ→【2】外足インエッジ
と伝えています。
でも実際は内足は浮いていて(グリップしていない)
外足は角が立っているシーンが何度かあります。
そして内足が浮くのと逆である
内足は雪面についていて外足が浮いているシーンはありません。
でもグリップの順番は
【1】内足アウトエッジ→【2】外足インエッジであれば、
むしろ後者の外足が浮いて内足が噛むシーンが多く出ている方が自然です。
簡単に言ってしまうと階段からジャンプして
着地したときに事実ベースでは
右足からついてその後左足がついて着地したのに
「着地は左足からついて、
右足は後から着く順番です!」
といっているようなイメージです。
これなら
「いやいや、あなたいま右足から着地して
左は浮いていましたよ!」
と不思議に思われるのもわかりますよね?
内足のアウトエッジからグリップさせると解説されているのに
内足は浮いて、外足が噛んでいるのを見て
不思議だと思う事はこういう事です。
しかし【グリップ】という言葉の定義が違っていたら
どうでしょうか?
一般的にグリップと聞けば
【グリップ=エッジが雪面に接する】
というように思うのが一般的です。
ですから当然空中に浮いていればグリップはしていません。
しかし、雪面に対してエッジが触れればグリップというわけではなく、
角付けに対してしっかり荷重した瞬間が
グリップしたと感じる人は非常に多いです!
こうなってしまうとどこからがグリップで
どこまではグリップではないという主観的な話になるので
議論をしても意味がないです。
「確かに雪面に最初に触れたのは外足のインエッジだけど、
グリップしたのは内足のアウトエッジの方が先です!」
という話が出てきてもおかしくないからです!
スキー板の傾きや方向付けというワードから見ても…
解説出てくるワードで、他にも
【板の傾き】
【方向を決める】
に目を向けていっても、解釈が変わってきます!
まず【板の傾き】ですが、これは特に
雪面に触れていようがいまいが関係ありません。
空中でも板は傾きます。
板の傾きを変えるというただその一点に対して注目すれば
内足から傾き始めれば、雪面についていなくてもOKです。
「えっ!?でも内足を先に傾けたら
一瞬でもガニ股になりませんか?」
という疑問もあるかもしれません。
これもまた固定観念があります。
その固定観念が
【ひとつ前のターンでは両脚が同じ角付け量】
という考えです。
確かにひとつ前のターン後半で、両脚が同じ角付け量であれば
内を先に動かすとガニ股です。
ですが、ターン後半は外足の方が角付け量が強いので
外足(次の内足)を先に動かす、もしくは動かすスピードを速くして
フラットの時に両脚が同じ角度になります。
そしてさらに厄介なのが
【方向を決める】
というワードです。
正直いって、今回の情報の解釈を
色々な方向に分ける最大の原因がこの
【方向を決める】
です!
スキー雑誌でも【方向付け】
といった表現でよく使われますよね!
ではあなたにとって
【方向を決める】
とは何でしょうか?
例えば解説ですと
内スキーで【方向】を決めて
その後外足で外力を捉えるとあります。
しかし実際は内足が上がっていて
外足の方が先に雪面に触れているので
内足が上がり外足のインエッジが噛んでいる
ターン始動時には方向は決まっておらず、
その後内足が雪面ついたタイミングで
方向が決まるという事でしょうか?
このように方向が決まる、もしくは決まっていないという事の
定義が明確化されているかがとても重要です。
他にも方向付けと似たようなワードで
・ターンのきっかけ
・ターン始動
・ターン導入動作
・ターン前半
といったスキー用語たちを
きちんと明確にどういうものかを定義づけして
なおかつそれを具体的な動作で表現できますか?
ここが曖昧のままいくら情報を取り入れても、
かえって毎年たくさんの情報に悩まされるという
迷いの森にいざなわれるので気を付けてくださいね!
内足が浮いているのにスキーのターン始動は内足という技術論をどう捉えるか?
最後に渡辺さんは今回の動画を
どのように解釈するんですが?
という部分が気になるかもしれませんが、
一つアドバイスをお伝えするとしたら
「どっちでもいいですよ!」
です(笑)
だってどちらも肯定派も否定派も
定義によってはどちらも間違ってないです!
唯一間違いがあるとすれば
上達したいという目的に対して滑りが変わっていなければ
それは何を選択しても間違いです!
これだとあまりにも適当なので
もう少し詳しくお伝えすると、
正直今回の内容は全日本に出場するクラスの人たちが意識することであって
一般スキーヤーの9割以上は、もっと手前でやるべきことがあります。
といった感じです。
そこがないと何をやっても上達しません。
だって内足アウトエッジからターンを始めるという理論は、
目新しいものではなくこれまでにもずっと言われている技術論であり
それを意識しても上達しないと悩んでいるスキーヤーが
後を絶たないという状況が続いていますよね?
もし本当かどうか気になるのであれば、
今回の動画のイメージを1シーズンひたすら行って
滑りが根本から劇的に変わるか
1シーズンをかけて試してみてくださいね!