スキー技術論の違い?ターン前半の外向傾は日本だとNGで海外だとOKなのか? 311
日本には基礎スキーという
独自のスキー文化があり、
バッジテストや技術選など
アルペンスキー以上に
取り組んでいるスキーヤーが多いです。
もちろんメリット、デメリットがある為
色々な意見があるものの
私としては基礎スキーを通して
スキーを楽しめるのであれば
とても良い事だと思います。
ただそのデメリットとして
スキー上達の妨げになるような部分は
考えなければなりません。
以前メールマガジンの方で
スキーグラフィックさんが
アップしている
オーストリアメソッドの動画を
ご紹介しました!
とっても反響が大きかったようで、
上下動の部分だけでなく
股関節からの角付けを行う事が
基本だというシーンも
印象的だったようで、
「普段渡辺さんが、
股関節を動かせるかが
重要だと言っている意味が
よく分かりました!」
「日本だと腰外れだとか
ターン前半は真っ直ぐな軸で
内側に傾くとか言われますが
やはり基本は外向傾ですよね!」
という感想をたくさんいただきました。
もちろん長い軸で滑ったり、
内側に傾く感覚が
間違いではありません!
しかしながら何事も
前提と順序が重要です。
足し算や引き算を行っていないのに
かけ算や割り算は出来ないですから。
さて今回の動画をみて
1つ面白い質問がありました。
それは
「スキーグラフィック2019年8月号で
特集が組まれている
技術選女子選手の
春原選手の記事の内容と
オーストリアメソッドは
真逆なんですか?」
というものです。
今回はこの質問にお答えしていきましょう!
ターン前半の外向傾をどう捉えるか?
詳しう内容は雑誌を読んで
いただきたいのですが、
簡単に言ってしまえば
春原さんの記事は
ブーツを傾ける事で
軸をつくるという内容です。
日本のスキー指導ではよく
足元から動かすといわれていますが
似た様な内容ですね。
そして記事の中に
正解不正解を
表す画像があります。
その画像がオーストリアメソッドと
真逆に見える
という事です。
※引用:スキーグラフィック
確かにオーストラリアデモが
基本であり重要だと
伝えている姿勢が
春原選手の記事だと
×マークになっているように見えます。
あなたは、この2つの画像を見比べて
どのように感じるでしょうか?
因みに誤解のない様にお伝えしておくと
決してどちらかが
間違えているわけではありません。
ですからどちらを肯定否定しても
問題ありませんので!
どちらも間違えていないのに
全く逆の事を言っているように見える…
この謎を解説していきます。
関節運動はほぼ同じ?
さてこの内容に対して
どのように感じるか
メールマガジンの方で
感想を求めたところ
沢山の反響がありました。
たくさんの意見があり
面白かったです!
お伝えした様に
どちらも間違えではないので
どのように捉えてもらっても
その方のイメージ通り滑れていれば
問題ありません。
オーストラリアデモも
春原選手も上手ですもんね!
問題はどっちが正しいという事ではなく
同じスキーという競技で
なぜこれほどまで真逆に感じる内容が
出てくるのか?という事です。
ではそのなぞ解きを
していきましょう。
まず戴いた感想で
目立ったのが
春原選手のBAD画像は
腰だけ入って内倒するが、
オーストリアデモの方は
外脚にしっかり乗っている
というものです。
この部分が
実は日本のスキー界で意見の分かれる
非常に重要なポイントです!
それが
腰を外す行為は内倒なのか
外脚荷重なのか?
という部分ですね。
これは以前動画でも
配信しておりますので
興味があればご覧ください。
一般的に言えば、
『過度にやれば内倒するから、
適度な外向傾を!』
というところですが、
解剖学的にみて、
オーストリアデモと
春原選手のBADの関節運動は
それ程大きな違いがありません。
例えば
ウサイン・ボルトが走るのと
我々一般人が走るのとは
タイムは違えど走るという関節運動は
大きな括りで言うとほぼ同じです。
質が全然違うだけで
一人一人全く異なる運動を
しているわけではないですよね?
同じように
腰外れで内倒するのも
外向傾姿勢をとるのも
関節運動からすれば
似た様なものですよね。
でも同じような関節運動をしているのに
一方ではBADになり、
一方ではしっかりと外脚荷重になる…
この違いを決めている要素は何か?
もしあなたが
今回ご紹介した様な
感想をお持ちいただいたのであれば
まずは上記の部分が自分の中で
きちんと明確になっているか確認して下さい。
なぜ危険そうな膝入れ動作がGOODなのか?
さて前置きが長くなってしまったのですが、
今回の画像のもっとも大きなテーマは
春原選手の画像は
膝だけ入って危険そうに見えるのに
なぜ○とされているのか?
という部分です。
実際一番多くいただいた感想は
「春原選手の写真は
膝だけが内側に入って
危険に見える」
「X脚になりそう」
といった内容です。
確かにこの写真は
普段私が膝をケガするから
絶対に行って欲しくない
動作に見えます。
ではここで注目して欲しいのが
春原選手の滑りは
この画像の○とされているシーンが
一瞬でもあるか?
という事です。
Youtubeや雑誌で
確認していただければ
分かると思いますが
○とされている状態は
ありませんよね?
逆に×とされているシーンの
方があるぐらいです。
お気づきの方も多いと思いますが
ここで注目したいのが
画像の注釈にもある
あくまでも止まっている状態での
イメージになりますが・・・
という部分です。
ここに2つの重要なポイントがあります。
1つ目は
“あくまでも止まっている状態”
という前提、
2つ目は
“イメージ”という部分です。
実はこの2つのポイントこそ
トップデモやインストラクターの
感覚や指導と
一般スキーヤーの人が
食い違う原因の部分です。
トップ選手からの情報を整理する2つのポイント
①あくまでも止まっている状態
まず1つ目の
“あくまでも止まっている状態”
について考えていきます。
『あくまでも』という言葉には
色々な意味がありますが
今回のケースでは『限定的に』という
意味合いです。
ですから
止まっている状態ではこうですが
滑っている状態で
こうなるという訳ではない
とも言い変えられるわけです。
現に、画像の様な
膝だけが内側に入った
シルエットは
滑走中には表れていませんよね?
しかし一般スキーヤーの多くは
実際の滑りの中で
この膝だけが内側に入るシルエットが
表れてしまいます。
その理由は
トップ選手と違って
一般的なスキーヤーの多くは
その場で止まっている状態が
動作のベースである
という事です。
これは人間が持っている
その場に立っていたい
という“本能”が原因です。
同じような話で
よくスキー界では
足元から動かすという
表現があります。
トップ選手達は
足元“から”動かす感覚でも
股関節や上体、
重心が動いていきます。
しかし一般スキーヤーの人たちの多くは
足元“だけ”を動かして
自分はその場に留まろうとします。
これも同じように
画像の様な
膝だけが内側に入る例ですね。
トップ選手達は
実際に滑る時と
立っている時の感覚が違う事は
身体に染み込んでおり
言わなくても分かっています。
むしろ立っている時の感覚を
滑る時の感覚に当てはめると
違う動作になる事も
言われなくても分かります。
ですから今回の画像を見ても
「春原選手はそういう感覚で
滑っているのね」
と実際の動きではなく
感覚的な話なんだと
本質的に分かるというわけです。
しかし止まっている状態が
ベースの人たちにとっては
“本当に”画像にある動きを
してしまう、
もしくはしているのだと
思い込んでしまいます!
ようは“あくまでも”が
通じないという事です。
②イメージ
2つ目のポイントである
“イメージ”も似ています。
「○○のイメージで!」
と表現する裏には
実際の動きはそうならないケースが
よくあります。
例えば基本ポジションをとる時に
「前転するイメージで!」
といって本当に前転はしませんよね(笑)
話をまとめると
今回取り上げた
スキーグラフィックの
春原選手の画像において
〇とされている動きは
“実際に”行う動作というよりは
イメージの話であり
止まった状態で行うと
この様な感じだよ!
という事ですね。
くれぐれもイメージ上の動作なのに
本当に膝だけ内側に入れないように
気を付けてくださいね!