スキーロボットから分かる前後差誤解とスキーの本質!さらにはオフトレの順序まで!? 331
これまでの記事で
股関節を主体とする動作での
滑りをお伝えしました。
股関節の動きだけで
ほぼほぼ人間がスキーしているのと
同じ様にスキーロボットも
滑っていますよね!
普段私の発信で
股関節の動きのことを
最優先でお伝えしている理由が
何となくでも伝わると嬉しいです。
さて今回は少し変わった動作を
主体とした滑りをご紹介します!
この動画を通して
見ていただいているのであれば
お気づきかもしれませんが
前後差を主体とした滑りです。
スキーロボットの動画の
3:03~3:25をご覧ください。
※引用 福井大学の清水史郎先生 youtubeより
内脚を引き
外脚を前に出す事で
ターンが出来ていますよね!
テレマークスキーは
まさにこのような動作が
ベースとなっています!
戦車が方向転換する時も
外側のキャタピラが前に進み
内側のキャタピラが後ろに進むと
その場でクルッと回転します。
この原理をベースに考える
選手や指導者は
「外脚を前に出して
内脚を後ろに引く!」
「テレマークがそうでしょ!」
という指導内容を
良く使います。
これも一見論理的に
問題ない様に思えますが
実は大きな弱点も潜んでいます。
基本となる動作と真逆の現象が起きる
それは
股関節主体の滑りとは
前後差が逆になる!
という部分です。
このスキーロボットの動画で
最後に股関節主体の滑りが
出ていますが
5:08秒辺りと5:20秒辺りで
一時停止をしてみると
よく分かります。
前後差はどうなっているでしょうか?
これまでにお伝えした
外脚前、内脚引くとは逆で
外脚が後ろ、内脚が前なのが
お分かりいただけるでしょうか?
実は股関節が正しく使えると
このテレマークの様な
前後差とは逆の現象が生まれます。
これは以前ご紹介した
テッドリゲティ選手の
映像でも同じように
ワールドカップ選手の滑りを
上から撮影した動画をみても
上記と同じ前後差が生まれます。
※引用 テッドリゲティ選手Facebookより
オーストリアメソッドの
ベースとなっている
アルペン基本姿勢も
内脚をブーツ程前に出して
外脚が後ろになる前後差をつけると
説明があります。
逆にスキーロボットの
前後差動作を主体とした滑りを
もう一度見ていただくと
股関節の動きはほぼなく、
足首の曲げ伸ばしが主体ですよね?
実際スキーはブーツを履いているので
テレマークはブーツの踵が浮く仕組みで
この動作を再現しています。
つまりテレマークの様な
板が前後に動かしやすい上体ですと
これだけで曲がれて楽なのですが、
実際ハイスピードで
強い外力に耐えなければ
いけない場合はこの外脚前で内脚引く
という動作主体の滑りだと
厳しくなります。
また冒頭でもお伝えした
外脚前内脚引くと
提唱している指導者の多くも
実際ハイスピードの小回りを行うと
外脚後ろ、内脚前の
前後差になっています。
これは意識と
実際の現象のズレの場合が
多いですね。
(本人はそう意識で滑っていても
実際の現象は違う状態の事)
これを分かって上で
意識しているんであれば
問題ありませんし、
外脚前の内脚引く動作を
主体としたスキーロボットの滑りが
自分の目指す理想形の滑りなのであれば
OKです!
意外と人間が行うと
外脚前の内脚引く動作以外に
たくさんの動作が入っています。
今回ご紹介した様に
本当に外脚前の内脚引く動作だけ
使って滑ると
こういう滑りになるんだという事は
頭に入れておいてくださいね!
あなたはどこの関節を主体に練習をしていますか?
さてこれまでに
スキーロボットの滑りを通して、
『ある一つの動作を主体としたら
どの様な滑りになるのか?』
という部分を見てきました。
・足の曲げ伸ばしが主体
・股関節の左右の動きが主体
・股関節のひねりが主体
(実際は左右の動きも含まれている)
・足の前後差が主体
あなたがが思い描く理想の滑りは
どの動作が主体の滑りだったでしょうか?
どれもターンはできるわけなので
沢山の技術論が溢れているのも
仕方がないようにも思えます。
では最後にお伝えしたいのは
今回ご紹介している
動作の複合系です!
これまでにさんざん動画を
ご覧いただいているので
すでにお気づきかもしれませんが、
スキーロボットの動画の
3:57~4:24をご覧ください。
※引用 福井大学の清水史郎先生 youtubeより
まさにスキーですよね!!
このスキーロボットの滑りには
どの動作が含まれているか
分かるでしょうか?
見た目だけで言うと
その少し前の
股関節のひねり動作主体の
滑りと似ていますが
もう1つ大きな要素が
含まれています。
それがこのスキーロボットシリーズの
最初にお伝えした
脚部の曲げ伸ばしです!
3:57で一瞬スキーロボットが
沈み込むのが分かるでしょうか?
その後切り替えの時に
足の長さが伸びています。
この曲げ伸ばしが加わる事で
より一層上手に滑る人間の動きに
近づきますよね!
なぜこれほどまでに
人間の滑りに近いのかと言うと
スキーの基本となる
3要素がきちんと出来ているからです。
その3要素は
1.角付け(股関節の左右の動き)
2.回旋(股関節のひねり)
3.荷重(足の曲げ伸ばし)
ですね!
スキーロボットが行っている動作は
ばっちりこの3要素を満たしています!
さてここで気を付けたいのが
脚の曲げ伸ばしと言っても、
このシリーズの最初に紹介した
脚の曲げ伸ばし主体の滑りとは
真逆の動きだという事です!
動画の最初に戻ると
脚の曲げ伸ばし主体での
滑りがありますが、
外脚を伸ばすことをきっかけに
ターンをして、
切り替えの時に曲げて
戻していますよね?
一方今回ご紹介している
股関節のひねり+左右の動きと
組み合わせた足の曲げ伸ばしは
ターン合わせて脚を曲げていき、
切り替えで伸ばしています。
でもこのような内容を聞くと
「あれ?ターン前半で脚を長くするって
言われてきたんですが?」
「脚を長くすることで
力が出るって習ってきました!」
という意見も多いです。
これには色々とからくりがあるので
違う機会にお伝えしますが、
まずはスキーロボットの動画を見て
どちらの滑りが自分とって良いと感じるか
確かめてみてください。
このシリーズの最初に
お伝えした通り、
ロボットの良いところは
プログラムされている動作以外の
余計な事をしないところです!
人間は色々な動作を
それこそ無意識に組みわせているので
実際に本人が着目している動作とは
別の動作を行っているケースは
珍しくありません。
だからこそ
人それぞれいう事が違うし、
指導内容も違います。
ただ今回のスキーロボットを
見ていただくと分かると思いますが
ベースとなる動きは
実はシンプルなんです。
今回はプログラムされた動作を
ただこなすだけですが、
ここにさらに画像分析や
音声認識による
コミュニケーションといった
AI機能が入ったとすれば・・・
分かりやすい見本に、
的確な分析、表現、
ですからこのテーマの最初に
【スキー指導はAIロボットに奪われる?】
といったブログタイトルを書いたわけです。
ただ一つ誤解しないよう言っておくと
シンプル=簡単ではありませんからね!
さらにスキーロボットから学ぶオフトレの取り組み
最後に雪上技術だけではなく
オフトレの取り組みべき順序まで
スキーロボットから学んじゃいましょう!
それは
『自分が行っている取り組みとの
照らし合わせ』
です!
と、言われても
イメージが湧かないと思いますので
具体的にお伝えしていきます。
まずこのスキーロボットは
動力を持っていません!
ただ落下しているだけですよね?
要は自らエネルギーを発しているわけでは
ないという事です。
その落下中に
様々な関節となる部分を
動かしている事で
ターンをしています。
でも多くのスキーヤーが
オフトレなどでまず取り組むのが
自ら発するエネルギーを鍛える
取り組みです。
もちろんこのロボットが
フニャフニャの素材で
出来ているのであれば
動作をしてもそこにかかる
力に耐えられず
すぐに転倒してしまいます。
それと同じように
スキーをしていて
その外力に耐えられず
崩れ落ちてしまう、
へたりこんでしまうのであれば、
ロボットが素材の剛性を
確保するのと同じように
その力を確保する事は最優先です。
でもそうでないとしたら
最優先で行うべき取り組みは
なんでしょうか?
そしてその最優先で
取り組むべき内容として
もうひとつ注目して欲しいのが
このスキーロボットは
下半身しか動かしていない
という点です。
人間には多くの関節があり
自由に動かせるのに対して
このスキーロボットは
股関節の部分と
膝足首の曲げ伸ばししかありません。
その股関節も私たちの様な
自由度はありませんし、
上半身にいたっては
ただの塊です。
ですがスキーの3要素を満たした
滑りはとてもスムーズで
上手でしたよね!
きっとあなたも
これまでに
上半身の向きや腕の構え、
ストックの位置や
目線の方向など
様々な事を言われたり
意識していると思います。
もちろんそれが
間違っているわけではありませんが、
最優先で取り組むべきは
いま意識している事なのか?
というのはスキーロボットの
滑りを通して
一度シーズン前に
考えてみてください!
シーズンで目指すべき方向を
間違えるとそのシーズンが
水の泡になってしまう事は
珍しくない事なので!